【2014年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「ケアの倫理」

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平成26年度【2014年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「ケアの倫理」です。

【問題】「規範理論における主題としての「家族」」と題する論文の中で、フェミニズムにおけるケアと正義の二元論についての記述の抜粋である。この文章を読み、「ケアの倫理」と「正義の倫理」に関する筆者の分析を踏まえて、あなたの考えを論じなさい。

筆者の分析(簡略版)
ケアの倫理は、他者を他者として尊重する態度という本質をもとに、ケアすることを果たしている女性など社会的弱者に対してなど個別のニーズを汲み上げるという民主主義に最も根ざしたものなのであり政治に必要である。

一方で、公的領域における規定的な倫理である正義の倫理は、「一般性」や「普遍性」を重視するものであって、家事労働などを担う女性の視点を政治から排除してきた。

よって、ケアの倫理と正義の倫理を統合した考え方が重要である。

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ケアの倫理(慶應法2014)解答例

【筆者の分析】「正義の倫理」は、自らの権利を自らの権利と競合するものと捉えるものであり、「ケアの論理」に、他者への共感、自己批判、文脈の中で生じる他者への責任といったより弱い者への視線から発せられるものである。ギリガンは、この両者を相対するものではなく、むしろ統合されるべきと主張した。しかし、ケア労働に必要とされる様々な能力は、公的領域で必要とされる能力と相反するものではない。ケアの本質は、公的領域において何よりも要請されている他者として尊敬する態度を持ち、さらに、その人の掛け替えのなさや唯一性を尊重する態度を持つ。自分と異なるニーズのケアは、政治にまず必要とされる自己を越える想像力と臨機応変な判断力を養っていると言える。ケアの倫理で、家族の構成員の異なりに焦点を当てて再検討することは、家族の複雑な依存関係を無視してえてきた政治的な「主体」像を厳しい批判に晒し、この問い直しが国民国家を根本から問い直す機会を与えるだろう。以上が筆者の意見である

【主張】私は、ケアの倫理は日本にとってこれから重要になる考え方だと思う。家族の構成員間の異なりに焦点を当てて再検討するのと同じく、国民の異なりに焦点を当てたケアの倫理を基礎に置く政治のあり方が今我々に求められているのではないだろうか。

【現状把握】現在、日本は、このような政治のあり方が実現するとは言えない。代表的な例は、LGBTQの問題である性的マイノリティの人々は10人に1人いるとも言われている。そのため多くの国では、その人たちのアイデンティティを尊重するために同性婚を合法化する動きが進んでいる。北欧の国では自らが性的なマイノリティに当てはまらずとも自分とは異なる他者のニーズに応えて選挙に行くなど何か行動に移す人が多いと言われている。それに対し、日本ではこのような問題は何か他人ごとのように考えられ、あまり議論が進んでいない。同じような事態は日本で多くの問題において起こっている。

【提案】私はこの現状は日本の周りに合わせることが重視される価値観に起因すると考える。しかし、ケアの倫理が浸透すると、この価値観は他者の違いを尊重できるようなものに変わっていくはずだ。そして、このような価値観が定着していくと自ずと政治は、ケアの倫理を活用したより良いものへとなっていき、多様性を認め合える社会が出来上がるのではないだろうか。

ケアの倫理(添削一部抜粋)

(講評➊)
-省略-
そんな中において、本文の要点をつかみ、筆者の「正義の倫理」と「ケアの論理」について分析できていたと思います。

(講評➋)
後半の部分ですが、「問い立て」はいいと思います。主張に対しての根拠も論理に飛躍なく記述できています。より高みを目指すという点においては、その自らの主張(考え)「=ケアの倫理の浸透」を、どうやって実現していくのかその具体策などを記述できれば、より高評価を得られます。今回のような難解な課題文のときは、ここで得点を重ねたいところです。

実現への具体策では、志望学部から関連付けて、「法整備」や「制度の再設計」の必要性の記述は王道でしょう。それに合わせて、今回の課題であれば「道徳教育」の観点からの具体策の記述もいいでしょう。

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