【2004年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「世界の未来像」

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【2004年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「世界の未来像」です。

【問題】著者の議論を踏まえて、あなたが考える「世界」についての未来像を自由に論じなさい。
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世界の未来像(2004年慶應法)の解答例

地球といってもそれは単一の世界というよりはそんな軽い靴可能世界が形成されていると言える。代表的なものとして伝統的な主権国家としての世界や経済活動が作り上げる世界広い意味での文化交流によって、作られた世界がある。この三者の併存が続き、戦争と平和の問題がますます複雑化する中、NGOやINGOが作り出す世界が、これからますます重要になってくるだろう。なぜなら、非政府組織では、政治・経済・文化のすべての面で活躍し、国境を越えたネットワークを築くことで、国際社会に新しい形のつながりを形成しているからである。このようなコミュニティが出来上がっていけば、それは「第四の世界」として多大な影響を持つことになるだろう。そして戦争と平和の問題もこの「世界」を無視して考えることが難しくなるであろう。以上が筆者の主張である。

私は、筆者が挙げた四つの世界はそれぞれ拡大していくと考える。「文化の世界」の拡大は、世界中の作品を見たり、聞いたりできるNetflixやSpotifyなどのストリーミングサービスやワールドカップオリンピックなどのスポーツ大会から第四の世界は、NGOの活動の国際的な隆盛から見てとれる。しかし、「国家の世界」や「経済的世界」の拡大はそれ以上のテンポで急激に進んでおり我々の安全や平和を脅かすのではないだろうかと思う。

「国家の世界」の急激な拡大は、直近では民族的なイデオロギーに固執したロシアによるウクライナ侵攻の発生や、イタリアの極右政党の台頭、アメリカでのトランプによる国論の二分などをもたらし、「経済の世界」の急激な拡大は、米中の激しい貿易戦争や経済統制がロシアや北朝鮮に対して外交戦略として用いられている状況をもたらした。このように、二つの世界の拡大は戦争のリスクの上昇につながってしまった。「文化の世界」や第四の世界が我々を救ってくれるだろうと考える人もいるかもしれない。しかし今回のロシア・ウクライナ戦争で分かったように、そのような「世界」は実際の戦争に対しては驚くほど無力であった。この不可逆的に拡大していく戦争のリスクから逃れるために、我々は「国家の世界」と「経済の世界」の拡大に対応するための新たな方法を模索していくことが必要不可欠になっていくだろう。

世界の未来像(2004年慶應法)の講評(抜粋)

筆者の論文は、未来の世界を多角的に捉え、文化、国家、経済の相互作用に焦点を当てている興味深いものです。NGOやINGOが形成する「第四の世界」の重要性への着眼は洞察に富みます。また、具体的な例を挙げながら「国家の世界」と「経済の世界」の拡大が安全と平和に懸念を抱かせる点にも注目です。論文は洗練された議論と未来に向けた重要な提言を含んでおり、今後の展望に対する議論を深める基盤となっています。

<より高みを目指して>
➀複雑な文章
文中の一部の文章がやや複雑で理解しにくい部分があります。文を簡潔かつ明確にするために、例えば、「NGOやINGOが作り出す世界が、これからますます重要になってくる」という文は、「NGOやINGOによる国際的な活動が今後ますます重要性を増すでしょう」と表現し直すことで理解がしやすくなります。

➁段落構成
論文の構造を強調するため、段落をもう少し明確に分けることができます。例えば、「文化の世界の拡大」と「国家の世界・経済的世界の拡大」についてそれぞれ新しい段落を作成することで、論理的な流れが強調されます。

➂語弊の回避
“驚くほど無力であった”という表現は避け、より客観的かつ客観的な評価を心がけると良いです。例えば、「そのような「世界」が戦争に対して十分な影響力を発揮できなかったことが明らかになった」といった表現が適切です。

➃結論の強調
最後に、結論を強調し、主張の重要性を再確認させると良いでしょう。たとえば、「この不可逆的に拡大していく戦争のリスクから逃れるためには、新たな手段の模索が喫緊の課題となり、我々は積極的な対応を模索していくことが不可欠だ。」などと結論をまとめることができます。

<改善点>
もっと、「丁寧に、深い具体的な考察」があるとよかったかな。この辺りについては、添削の中で指摘しています。

➀ストリーミングサービスやスポーツ大会のどんなところにNGOの隆盛が見てとれるのだろう。より具体的な記述があると良かったです。また、一般の人々は、それらを見て、NGOの隆盛を感じているのだろうか。その根拠の記述があると良かったです。

➁カタカナの名詞、商品名など一般的に使用されている用語以外は、日本語、漢字を使用しましょう。

➂好みの問題ですが、「~ていく」が一文に2つあると、リズム感が損なわれます。それから、「新たな方法」とありますが、例えばどんな方法ですか?ここが一番知りたいことですし、ここを論じることが最も大事なポイントだったと思います。ここにも、論文としての「雑さ」を感じた点でした。

<違う視点>
NGO,INGOが益々重要だと筆者は述べているので、その「NGO,INGO」の観点から、「世界」の未来像について論じても良かったかもですね。
(例)
・NGO,INGOは、平和をもたらすのだろうか
・NGO,INGOが作り出す世界は、どういったものになるだろうか。
という観点など

<筆者の論点と主張>
グローバル化、グローバリゼーションの世界において、どのように平和を実現していくが論点。その中で、非政府組織(NGO)・非営利非政府組織(INGO)が、重要な役割を果たすのではないだろうかというのが主張。その理由として、現在の世界は、第一に国家、第二に、経済圏、第三に広い意味での文化交流によって作られた「世界」によって成り立っている。独立主権国家の対立が続く現代において、自由意思に基づく国民レベルでの交流はかつてないほど重要性を増しているから。

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