【2020年度】筑波大学情報学群(学校推薦型)の小論文解答例「読書・言語文化継承」

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【2020年度】筑波大学情報学群知識情報・図書館学類(学校推薦型選抜)の小論文解答例「読書・言語文化継承」です。改題となります。

【問題】「読書の理想」についての著者の主張を簡潔に説明し、それに対する賛成あるいは反対の立場を明確にした上で、考えを書け。理由も述べること。

【改題】自分自身が作品を深く読解した経験を取り上げて、あなたにとって、本を読む愉しみとは何か。それがどのように「言語文化の継承」となっているのかを述べなさい。

【文章要約】本、とくに古典とのつきあいは、人間どうしの関係に似ており、読むたびに新鮮なおどろきに出会いつづける。書物は私たち側が自ら読むことを待っている。しかし、私たちがある本に関する知識や「すじ」を知るだけでは、その本がどのように書かれているかを自分で把握するという愉しみを味わうことはできない。長いつきあいによって書物がかけがえのない友人になり、すぐれた本ほど読み手の需要次第であたらしい顔でこたえてくれる。

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【ある人の例】読書を愉しむことと言語文化継承の小論文解答例

私にとって、本を読む愉しみとは、本が書かれた時代の特徴や価値観にふれることである。そしてそれを後世に語り継ぎ共有することが、言語文化の継承につながると考える。

竹取物語を例にとってみる。私は中学二年生の時に、竹取物語とかぐや姫との違いについてグループ学習で探求した。物語が書かれた平安時代の和歌や、帝を始めとする宮中の仕組み、さらに当時の人々の恋愛に関する考え方をこの物語から学んだ。さらに、かぐや姫と異なる結末を知ったことが嬉しく、その時の感想を下級生や家族に語ったことを今でも覚えている。

たしかに、人の感性や考え方は時代と共に変わっていくので、古典作品は現代に必要ないという人もいるだろう。しかし、私は、変化の激しい現代だからこそ、古典作品を読み、現代の言葉が構築される以前にどのような言語が使われ、そして人々がどのような価値観をもっていたのかという自国への理解が必要であると考える。日本に留学してくる外国人学生たちは、母国の文化の変遷に精通している。

よって、彼らと交流するときに、日本の言語文化の代表ともいえる古典についての教養がなければ、「猿まね日本人」と思われてしまう。そして筆者が文中で述べているように、本とのつきあいは人間どうしの関係と似ている。私たちは本を読むたびに新鮮な発見と出会う。そうした発見を他者に伝えることで、後世の人々に過去の言語と文化が継承されていくのである。

世界には長い歴史をもち、少しずつ変化してきた言語や、その言語の影響を受けてきた文化が多く存在する。人は、本を読み古の文化に思いを馳せる人々が、それを他者に語り継ぐことで言語文化の継承を担ってきたのだと思う。人間の一生は短く、同じ時代に生きる人々の価値観だけではわずかな知識しか得ることができない。よって、その先人たちから伝えられた言語文化を、今度は私たちが守り、未来に伝えていくべきであると考える。

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【添削・アドバイス】読書を愉しむことと言語文化継承

1.導入部の魅力を高める
現状の導入部もよいですが、「本を読む愉しみ」というテーマをより具体的に捉えるとさらに印象的になります。

例:「本を開くたびに、まるでタイムスリップするように、書かれた時代の人々の息遣いや価値観が感じられる。この瞬間こそが、私にとって本を読む最大の愉しみである。」

2.「竹取物語」のエピソードを明確化
「竹取物語とかぐや姫との違い」についての具体的な違いや学びの内容を、もう少し詳しく述べることで説得力を高められます。また、「異なる結末」という点についても、どのような違いがあったのか少し補足するとよいでしょう。

例:「例えば、物語の結末では、かぐや姫が月に帰る際の描写が現代のかぐや姫像とは異なり、悲劇性だけでなく人々の潔さや天命への畏敬が強調されていた。この違いに気づいたことで、私は平安時代の価値観が現代と異なることを強く実感した。」

3.議論を具体化する
「古典が現代に必要ないという人もいる」という点は重要ですが、この意見が出てくる背景や根拠を少し補足すると、説得力が増します。

例:「例えば、古典作品の言葉遣いが難解であることや、現代社会のスピード感には合わないといった理由から、古典を学ぶ意味を疑問視する声もある。」

4. 外国人学生の話との接続を工夫
外国人学生についての話題が少し唐突に感じられるため、もう少し前後のつながりを明確にすることをおすすめします。また、「猿まね日本人」という表現がやや刺激的なので、より柔らかい表現にすると印象が良くなります。

例:「特に、日本に留学してくる外国人学生たちは、自国の文化やその変遷について深い知識を持っている場合が多い。彼らとの交流において、日本の言語文化に関する基礎的な教養を持たないことは、互いの理解を深める上で不利に働く可能性がある。」

5.結論部を力強くまとめる
結論は十分にまとまっていますが、「今度は私たちが守り、未来に伝えていくべきである」といった部分を、より具体的に、あるいは感情的に訴える形にしてもよいでしょう。

例:「私たちは、先人たちが紡いできた言語文化を一時的な遺産としてではなく、未来へと続く命の糸として捉えるべきだ。それを守り育てる責任は、私たち一人ひとりに託されている。」

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【全体修正案】読書を愉しむことと言語文化継承

本を開くたびに、まるでタイムスリップするように書かれた時代の人々の息遣いや価値観が感じられる。この瞬間こそが、私にとって本を読む最大の愉しみである。そして、その発見を後世に語り継ぎ共有することが、言語文化の継承につながると考える。

例えば『竹取物語』を挙げる。この作品について私は中学二年生の時に「竹取物語とかぐや姫との違い」をテーマにグループ学習を行った。物語が書かれた平安時代の和歌や宮中の仕組み、さらには当時の人々の恋愛観を、この物語を通じて学んだ。また、かぐや姫が月に帰る場面では、現代の映像作品などで描かれる悲劇性とは異なり、天命を潔く受け入れる平安時代の価値観が色濃く反映されていることに気づいた。これがとても新鮮であり、物語の結末が現代のかぐや姫像と異なることに驚きと感動を覚えたことを今でも鮮明に覚えている。

もちろん、現代において古典は必要ないという意見もあるだろう。特に古典の言葉遣いや内容が難解であり、現代社会の効率性や実用性にはそぐわないという主張も理解できる。しかし私は、変化の激しい現代だからこそ古典に触れ、自国の文化や価値観を再認識する必要があると考える。特に現代の言葉が構築される以前にどのような言語が使われ、人々がどのような価値観を持っていたのかを知ることは、過去を基盤に未来を築くために不可欠である。

また、日本に留学してくる外国人学生たちと交流する際にも、古典作品の知識は重要であると感じる。彼らは自国の文化やその変遷について深い知識を持っており、それを誇りとしている場合が多い。もし日本人が自国の言語文化に関する教養を欠いていれば、互いの理解を深めることが難しくなるだけでなく、日本の文化を軽視していると見なされる可能性もある。そのため、古典に親しむことは日本人としてのアイデンティティを形成し、他国の人々との対話をより深めるためにも重要である。

筆者が述べているように、本との付き合いは人間同士の関係に似ている。本を読むたびに新たな発見があり、その発見を他者に語り継ぐことで、過去の言語や文化が未来に受け継がれていく。本を読むことは個人の内的な楽しみにとどまらず、社会全体の文化継承に寄与する行為である。

世界には長い歴史を持ち、少しずつ変化してきた言語と、それに影響を受けた文化が多く存在する。人間の一生は短く、同時代の価値観だけでは限られた知識しか得られない。だからこそ、先人たちが紡いできた言語文化を守り、未来に伝えていく責任が私たちにはある。私はこれからも本を通じて古の文化に触れ、その価値を他者に伝えることで、言語文化の継承に貢献していきたいと考える。

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【豆知識】深く読解するとは

明治5年の1872年まで日本は太陰暦を使用していましたね。これは、和歌にも大きな影響を与えていることがわかります。1872年までの日本の物語や和歌には、「月」そのものや「月」を想像させる言葉が多いんです。
たとえば、下の和歌
「この夕べ 降り来る雨は 彦星の 早漕ぐ舟の 櫂の散りかも」※櫂(かい)は舟を進めるために水をかくために使う道具
ここに出てくる「舟」=「月」ですね。つまり、夜空を見上げていると、「月」があり、それが「舟」に見えたというわけです。なぜそう言えるのか、彦星が織姫に合える日は7/7(旧暦6/7)の七夕。
太陰暦なので、毎月7日は上限の月の前日となります。上弦の月とは、半円です。
竹取物語月と船の話図解
 
こんな読解ができるのではないでしょうか。
「今夜は、大雨だ。彦星は一刻も早く織女の元にたどり着きたいということなのだろう。大急ぎでその船を進ませているから、そこから散る雫は、急げば急ぐほど、その量は増し、地上には雨となり降り注いでいるのだろう。」と

読解は、言葉だけの理解に留まらず、心情・歴史・科学など多くの分野から意味・意図をくみ取って初めてできることですね。読解するとは、科目・教科の枠組みを越えたところにあるというわけです。

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