インバウンドの課題について大学入試小論文の解答例

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インバウンドの課題について大学入試小論文の解答例です。金沢大学観光デザイン学類の合格者のものとなります。

【問題】今後日本が観光立国になるために、インバウンドにおいて重要と思われる諸問題からひとつを取り上げて、その問題を改善するために今後どのような取り組みを行う必要があるかについて異分野融合的観点から850字以内で自分の考えを述べなさい。
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インバウンドの課題について小論文の解答例

アフターコロナ禍において、日本の観光産業はますます盛り上がっている。インバウンド増加による経済効果は望ましい一方で、問題もある。とりわけ、現在オーバーツーリズム問題が挙げられる。この解決策として私は、日本で宿泊税を導入すればよいと考える。なぜなら、観光客は訪問場所に滞在したら、その地域における参加者となるからだ。

京都市では、インバウンドが増加したことで、オーバーツーリズムの一つである交通混雑に悩まされている。特に交通バスでは、スーツケースを持って乗車するため、地域住民が乗車できないといった問題が生じた。宿泊税の導入によって得た税金で、京都市内を走行する地下鉄の運賃を下げる。これにより、交通バスを利用していたインバウンドの一定数が地下鉄での京都観光へと流れる。宿泊税をインバウンドから徴収することで、オーバーツーリズムを解決することができる。

たしかに、観光地に滞在しただけで宿泊税を徴収することに対して、不満を覚えるインバウンドもいるかもしれない。しかし、住んでいる地から別の地へ訪問している際は、その地での参加者なのではないだろうか。観光地に住む地域住民は、当然のことながら住民税を収めている。つまり、インバウンドは、数日の間でも宿泊すれば、その地域の住民であり、税金を納める必要があるのだ。

実際、イタリアのベネチアでは、2023年1月より訪問客から入島税を徴収することを定めた。オーバーツーリズム抑制のために、日本も動かなければいけないのだ。インバウンド自身が地域の参加者であることをより自覚するために、飛行機内で日本が宿泊税を導入した経緯をアナウンスする。インバウンドが宿泊税の導入を理解し、地域住民と観光地を共創する自覚が必要になるのだ。

以上のように、日本で宿泊税を導入し、より理解を促すために機内で宿泊税導入のアナウンスといった教育の分野を融合的に活用することが必要である。宿泊税を導入し、よりインバウンドを呼び込んで経済効果を生み出してほしいと願う。

インバウンドの課題について小論文の講評

論文は興味深く、宿泊税の導入を通じてオーバーツーリズム問題へのアプローチを提案しています。具体的な問題(交通混雑)とそれに対する解決策(宿泊税収入で地下鉄運賃割引)が示され、効果的な提案といえます。

提案は合理的であり、他国の事例(イタリアの入島税)を引用し、国際的な観光問題への理解を深めています。また、宿泊税の理念を広めるための飛行機内アナウンスの提案は、観光客と地域住民の共感を促進する上で有益です。

総じて、提案は建設的であり、論文はインバウンド観光の促進と地域との調和を図る上での一手段として価値があります。

【改善点】
反対意見(反論・反駁)や懸念点を考慮する余地や、実施に伴う具体的な課題について触れられていないのが課題です。アナウンスの実現可能性やその具体的な効果についても一層具体的に考察することが望まれます。

インバウンドの課題について小論文の添削(抜粋)

【新たな構成案】
「異分野融合的観点」という条件があるので、題意に沿っていることをより明確にする構成の仕方もあります。

原文をもとに、一部肉付けした構成は以下のようになるのかな。※キーセンテンスのみ。

・現状日本におけるインバウンドには、オーバーツーリズムという課題がある。
・この解決策には、交通整備の観点から宿泊税、テクノロジーの観点からダイナミックプライジングを融合的に取り入れることで解決が図られると考える。
・宿泊税については、~である。実際、イタリア~の成功例もある。
・一方、ダイナミックプライジングについては、現在導入されているものからテクノロジーを活用し、よりリアルタイムで価格の適正化を図る。~。
・以上のように、オーバーツーリズム解消には、交通整備とテクノロジーという観点から融合的に解決を図っていく必要がある。

【変動価格制(ダイナミックプライジング)】
同じ商品やサービスだったとしても、需給に応じて価格を変動させる仕組み
最近、様々な業界で導入されています。身近な例だと飛行機代や旅館・ホテルの料金はGWやお盆休みや年末年始等の大型連休の時に値段が上がっています。また、鉄道料金・電車代に導入しようとする動きは、JR等の鉄道各社だけではなく、国土交通省も検討を開始しています。
→インバウンドにあてはめると、これにより旅行日が分散するのかな。

【一般論】オーバーツーリズム以外のインバウンドの課題

<受け入れ側の観点>
・飲食、宿泊など観光関連業種の人手不足
・観光地の住民と観光客のトラブル

<旅行者側の観点>
・インバウンドのニーズが多様化、個別化しており、それに対応できていない。
・無料Wifiスポットが少ないなど、IoTやデジタル活用・普及の遅れ。

<メタ的な観点>
・観光資源の乱用。歴史的な建造物や景観が観光開発によって適切に保護されず、劣化する可能性がある。
・CO2排出など環境悪化。航空機、鉄道、バスなど長距離の移動による温室効果ガスの排出は計り知れない。
・観光地格差。人気があるところばかりに集まるのでオーバーツーリズムとなっている。もっと魅力ある観光地が増えれば、観光客は分散するのかな。

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