異文化理解についての大学入試小論文解答例です。
異文化理解について、ある言葉に持っていたイメージが、大きくかわったあなたの経験について800字以内で述べなさい。
【ある人の例】異文化理解についての小論文解答例
「異文化コミュニケーション」という言葉に対して、私は日本以外の国々に関する知識がまず必要であるという印象を持っていたが、その印象を大きく覆された出来事があった。
高校1年生のとき、所属していた英語部で浅草でのフィールドワークを実施し、外国人観光客に英語でインタビューを行った。私は相手の国の文化について質問し、彼らは簡潔に答えてくれた。しかし逆に彼らから「なぜ浅草には仲見世が多いのか」や「奈良の東大寺の歴史について教えてほしい」などと尋ねられた際に、どう答えればよいのか全く分からなかった。この苦い経験から、まず私たち日本人が日本文化について理解したうえで外国人と接しなければ、ただ受動的に異文化を取り入れるだけになってしまい、コミュニケーションを図ることはできないのだと痛感した。私はこのフィールドワークを経験して以来、日本にある20の世界文化遺産について調べるなど、日本文化についての知識を積極的に増やしている。
では、海外ではどのように自国の文化を捉えているのだろうか。例えばアメリカでは、エスニックスタディーズという学問が存在する。アメリカには多くの国々からの移民が存在し、文化もそうした人々の価値観を大きく反映している。そのため、アメリカが他国と異文化交流をするためには、国内で少数派とされている有色人種の人々の文化について再認識する必要があると感じた学生たちが運動を起こしたことにより、この学問が生まれた。そして現在、アメリカではエスニックスタディーズが学校教育に組み込まれている。このように、自国の文化についての理解を促す動きは世界でも高まりつつあるのだ。
以上のことから、私は「異文化コミュニケーション」とは、まず自国の文化について十分な知識をもつことで初めて成立するものであると再定義した。そうすることで自国と他国の文化の違いを理解し、真の異文化交流を図ることができると考える。
(798字)
【添削・アドバイス】異文化理解についての小論文解答例
1.導入部分の明確化
冒頭の「その印象を大きく覆された出来事があった」というフレーズをもう少し具体的に書くといいです。
例:「日本以外の国々に関する知識が必要だと思っていたが、それは一面的な考えに過ぎないと気づかされる出来事があった。」
2.浅草での経験の詳細
エピソード部分は魅力的ですが、「どう答えればよいのか全く分からなかった」という表現を具体的な言葉に置き換えると、読者により深い共感を与えられるでしょう。例えば、どのような戸惑いを感じたのかを描写してみてください。
例:「仲見世の歴史や東大寺について尋ねられたとき、私の頭には何も答えが浮かばず、沈黙してしまった。この時、自分がいかに自国の文化について無知であるかを思い知らされた。」
3. 「日本文化を理解する必要性」の部分の論理展開の強化
「ただ受動的に異文化を取り入れるだけ」という表現を補足すると、主張がより具体的になります。
例:「自国の文化を理解せずに異文化を受け入れるだけでは、単に表面的なやりとりに留まり、相互理解にはつながらないことを痛感した。」
4. エスニックスタディーズの説明を簡潔に整理
エスニックスタディーズの部分はやや長く、読む側が主題から離れる可能性があります。背景説明を少し簡略化し、結論部分に力点を置くと良いでしょう。
例:「アメリカでは、自国の多様な文化を再認識するために、エスニックスタディーズという学問が誕生し、現在では学校教育にも取り入れられている。」
5. 結論部分をより力強く
結論はすでにしっかりしていますが、「真の異文化交流」という言葉を具体的に定義すると、さらに説得力が増します。
例:「真の異文化交流とは、自国と他国の文化の違いを単に理解するだけでなく、その違いを尊重し、相互に学び合う関係を築くことだと考える。」
【全体修正案】異文化理解についての小論文解答例
「異文化コミュニケーション」という言葉に対して、私は当初、日本以外の国々に関する知識を持つことが最も重要だと考えていた。しかし、その一面的な考えを覆される出来事が高校1年生のときにあった。
所属していた英語部で浅草にて外国人観光客に英語でインタビューを行うフィールドワークを実施した。私は相手の国の文化について質問し、彼らは丁寧に答えてくれた。しかし、逆に「なぜ浅草には仲見世が多いのか」「奈良の東大寺の歴史について教えてほしい」などと尋ねられた際、どう答えればよいのか分からず、沈黙してしまった。この時、自分が日本文化についてほとんど知識を持っていないことを痛感した。異文化コミュニケーションとは、単に他国の文化を受け入れることではなく、自国の文化を理解し説明できることが不可欠であると強く感じた。この経験をきっかけに、私は日本の20の世界文化遺産について調べるなど、日本文化への理解を深める努力を続けている。
では、海外では自国の文化をどのように捉えているのだろうか。例えばアメリカには、エスニックスタディーズという学問が存在する。多様な文化が共存する移民国家であるアメリカでは、少数派とされる人々の文化を再認識することが重要だと学生たちが訴えた運動を契機に、この学問が誕生した。そして現在、エスニックスタディーズは学校教育に組み込まれ、次世代が自国の多様性を理解する一助となっている。このように、自国の文化や歴史を改めて学び直す取り組みは世界でも広がりを見せている。
以上のことから、私は「異文化コミュニケーション」を次のように再定義する。異文化コミュニケーションとは、まず自国の文化を深く理解し、それを他者に伝えられる状態を前提として成立するものである。自国の文化と他国の文化の違いを理解し、それを尊重し合うことで初めて真の異文化交流が可能となるのだ。
コメント