現代日本が直面する「人口減少社会」は、少子高齢化の進展と深く結びついており、社会保障制度や労働力構造に大きな影響を及ぼしています。大学入試小論文では、この人口動態の変化に伴う課題を整理し、論理的に自分の考えを述べる力が求められます。本記事では、資料分析のポイントや具体例を交えながら、人口減少社会についての小論文解答例をわかりやすく解説します。
【問題】『世界人口の見通し(2019)』(国連事務局経済社会局)からの図「日本の年齢階層別人口推定」、未来社会のコンセプトについて述べた『Society5.0』(内閣府)からの図と文章を読み、グラフから読み取れることをまとめ、これからの社会を支えていくために行うべきことについて、あなたの考えを述べよ。【2021年度】大阪教育大学教育学部


大学入試小論文|人口減少社会の資料分析ポイントと具体例
現代日本が直面する人口減少社会は、少子高齢化や社会保障制度の課題と密接に関わっています。大学入試小論文では、資料を正確に分析し、自分の意見を論理的にまとめる力が求められます。ここでは、資料分析のポイントと具体例をわかりやすく整理します。
1. 資料分析の基本ポイント

- 人口動態の変化を把握する:総人口の推移、年齢別人口構成の変化、将来予測などを正確に読み取る。
- 高齢化の進行状況を確認する:65歳以上人口の割合の増加や、子ども・生産年齢人口の減少を把握する。
- 社会保障費との関連を考える:医療・年金・福祉の支出がどの年齢層の増加に伴っているか分析する。
- 課題と影響を整理する:人口構造の変化が財政、労働力、地域社会に及ぼす影響を考察する。
2. 資料分析の具体例

以下は資料をもとにした具体例です。
- 資料1(人口推移):2010年を境に人口が減少し、2060年には約4000万人減少。生産年齢人口と14歳以下の人口は半減、一方で65歳以上人口は横ばい。→少子高齢化が急速に進行。
- 資料2(社会保障費):1965年以降増加、2010年には100兆円超。医療費が増大した時期を経て、近年は年金支出が最大に。→高齢化による支出増加を示唆。
3. 小論文に活かす分析のポイント

- 問題の明確化:人口減少と少子高齢化が社会保障制度や財政に与える影響を整理する。
- 原因と結果をつなげる:人口構造の変化 → 社会保障費の増大 → 財政・労働力への影響、という因果関係を示す。
- 解決策の提案:子育て支援や教育政策の充実、女性・高齢者の就業促進、外国人労働者の受け入れ拡大など具体策を提示する。
- 資料と自分の意見を結びつける:単なるデータの列挙ではなく、資料から読み取れる課題を自分の考察と合わせて論理的に示す。
4. まとめ

大学入試小論文で「人口減少社会」を扱う際は、資料の正確な読み取り・問題点の整理・解決策の提案が重要です。資料分析を丁寧に行うことで、論理的で説得力のある文章が書けるようになります。
【ある人の例】人口減少問題小論文の解答例
資料1からは、2010年を境に日本の総人口が減少へと転じ、2060年までに約4000万人が減少すると予測されていることが読み取れる。特に、15~64歳の生産年齢人口および14歳以下の人口がいずれも半減している一方で、65歳以上の人口はほぼ横ばいで推移している。このことから、高齢者が人口全体に占める割合が急速に高まり、少子高齢化が深刻な段階へ進行していることが明らかである。
資料2では、1965年以降、社会保障給付費が増加の一途をたどり、2010年には100兆円を超えたことが示されている。特に1970年代から1990年代にかけては「医療」分野の支出が増大したが、2000年代以降は「年金」が最も大きな割合を占めるようになった。また、「福祉」に関する支出も顕著に増加しており、高齢者福祉や介護の拡充が社会的要請として強まっていることがうかがえる。
これらのデータから導かれる最大の問題点は、社会保障制度の持続可能性が危機に瀕しているという点である。高齢者人口の増加に伴い、年金・医療・介護などの給付費が膨張する一方、それを支える現役世代が急速に減少している。この構図が続けば、国家財政の逼迫や社会保障制度の機能不全を招くおそれがある。
この課題を克服するためには、労働力人口の減少を補う多面的な施策が不可欠である。まず、子育て支援や教育環境の充実を通じて出生率の回復を図ることが重要である。さらに、女性や高齢者の就業促進、柔軟な働き方の整備などにより、国内の潜在的労働力を活用することが求められる。また、労働力不足を補うために、外国人労働者の受け入れを拡大し、多文化共生社会の基盤を整えることも有効である。
少子高齢化は単なる人口問題ではなく、社会構造全体の再設計を迫る課題である。国や地方自治体、企業、市民がそれぞれの立場から持続可能な社会保障制度の構築に向けて協働していくことこそが、将来の日本社会を安定的に支える鍵となるだろう。
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