【2021年度】大阪教育大学教育学部(一般前期)の小論文解答例「人口減少問題」です。改題となっています。
【問題】『世界人口の見通し(2019)』(国連事務局経済社会局)からの図「日本の年齢階層別人口推定」、未来社会のコンセプトについて述べた『Society5.0』(内閣府)からの図と文章を読み、グラフから読み取れることをまとめ、これからの社会を支えていくために行うべきことについて、あなたの考えを述べよ。
【ある人の例】大阪教育大学教育学部(2021年度)小論文の解答例
資料1からは、2010年を境に、人口が減少していくことが読み取れる。2060年までの約4000万人の減少の中で、15~64歳、14歳以下の人口は約半分になっているにも関わらず、65歳以上の人口はほぼ変わっていない。そして高齢者が人口全体に占める割合が高くなっている。これらは少子高齢化が急速に進んでいることを物語っている。
資料2からは、社会保障給付費が1965年から増え続け、2010年には1000兆円を超えていることが分かる。「医療」の割合が大きかったのに対し、近年では「年金」が最も多い割合を占めている。また、「福祉」も大きく増えた。これは高齢化によって、高齢者をサポートせざるを得ない状況に置かれているからだと考えられる。
これらの現象から生じる問題点は、このままだと日本財政は破綻する可能性がある点にあると考える。少子高齢化が歯止めを効かずに進み、社会保険給付費の多くを受給している高齢者が増え、ますます費用を負担する側の労働の現役世代を必要とするが、その数が全然足りていないからだ。
【添削・アドバイス】大阪教育大学教育学部(2021年度)小論文の解答例
1.統一感のある構成
文章の流れは基本的に良いですが、第3段落(問題点の指摘)の冒頭がやや唐突です。以下のように、問題点を挙げる前に「これらのデータから考えられる問題点は~」のような接続句を加えると、より滑らかな流れになります。
例:これらのデータから考えられる問題点は、日本の財政が破綻する可能性がある点である。
2.データ解釈の強化
データ解釈は明確ですが、「資料1」「資料2」で示されたデータをもとに具体例や背景説明をもう少し加えると説得力が増します。たとえば、資料2について「1965年時点では社会保障給付費がどの程度だったか」を簡単に触れると、増加の深刻さがより明確になります。
例:資料2からは、1965年時点では社会保障給付費が数兆円規模だったことがわかるが、それが2010年には100兆円を超え、約半世紀で急激に増加したことが示されている。
3.言葉の選び方
以下の部分は、表現をもう少し正確かつ簡潔にすると読みやすくなります。
「~せざるを得ない状況に置かれている」は少し回りくどい印象があります。「高齢化により、高齢者への支援が必要となっている」と言い換えると簡潔です。
(2) 「少子高齢化が歯止めを効かずに進み」
「歯止めを効かずに進む」は少し硬い表現です。「歯止めがかからずに進む」の方が自然です。
(3) 「その数が全然足りていない」
「全然」という表現はカジュアルな印象を与えるため、正式な文章では避けた方が良いです。「その数が著しく不足している」などに言い換えると適切です。
4.問題点に対する解決策の提示
文章は現状と問題点を適切に指摘していますが、もし制限がなければ、簡単な解決策の方向性を示すとさらに評価が高くなる可能性があります。たとえば、次のような一文を追加してみるといいでしょう。
例:このような状況を改善するためには、労働世代の人口減少を補う施策が急務である。たとえば、子育て支援の充実や外国人労働者の受け入れ拡大など、持続可能な社会保障システムを構築するための多角的なアプローチが求められる。
【全体修正案】大阪教育大学教育学部(2021年度)小論文の解答例
資料1からは、2010年を境に人口が減少していくことが読み取れる。2060年までに約4000万人が減少する中で、15~64歳、14歳以下の人口は約半分になっている一方で、65歳以上の人口はほぼ変わらない。この結果、高齢者が人口全体に占める割合が高まり、少子高齢化が急速に進んでいることが分かる。
資料2からは、社会保障給付費が1965年以降増え続け、2010年には100兆円を超えたことが分かる。特に「医療」の割合が大きかった時期を経て、近年では「年金」が最も多い割合を占めるようになった。また、「福祉」の費用も大きく増加している。これは高齢化によって高齢者への支援が必要となっていることが背景にあると考えられる。
これらのデータから考えられる問題点は、日本の財政が破綻する可能性がある点である。少子高齢化に歯止めがかからず、社会保障給付費を受給する高齢者が増加する一方、その費用を支える現役世代が著しく不足しているためである。このような状況を改善するためには、労働世代の人口減少を補う施策が急務である。たとえば、子育て支援の充実や外国人労働者の受け入れ拡大など、持続可能な社会保障システムを構築するための多角的なアプローチが求められる。
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