【2012年度】慶應義塾大学法学部小論文「未来国家」解答例とポイント解説|技術が支配する社会の危うさとは

未来国家サムネイル 小論文
スポンサーリンク

2012年度の慶應義塾大学法学部小論文のテーマは「未来国家」。
課題文では、脳波探知機や遺伝子改変などの先端技術によって、人間の欲望や行動を制御し、犯罪や戦争のない社会を築こうとする国家像が描かれました。
一見、理想的に見えるその構想ですが、「人間らしさ」や「自由」はどうなるのでしょうか。
この記事では、出題の意図を踏まえながら、共通の主題・利点・問題点を整理し、合格者レベルの解答構成をわかりやすく解説します。

【問題】以下の文章は1994年に公刊された「国家の未来」と題する論考で示されたいくつかの未来国家像のうち二つを抜粋したものです。これを読み「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」に共通する考え方を簡潔にまとめたうえで、それに対する擁護と批判の両方を展開しなさい。
スポンサーリンク

【2012年度】慶應義塾大学法学部小論文のポイント整理

① 共通する考え方

① 共通する考え方
未来国家Ⅰ・Ⅱに共通するのは、技術(脳波探知機・送信装置・ショック装置、遺伝子工学など)を用して「人間の行為や性質を制御・改変」し、犯罪・暴力・不道徳行為のない、平和かつ安定した社会を実現しようとする国家像。

つまり、「科学技術を媒介として、善・正義に従う人間を制度的・構造的に作り直す」という考え方。
その結果、警察・裁判所・刑務所といった従来の法的・制度的手段が不要になる、という理想。

② 擁護の視点(利点)

② 擁護の視点(利点)
戦争や犯罪、暴力が根絶される可能性:人間が不正や暴力を思い起こさないように設計すれば、社会秩序が飛躍的に向上するという期待。

環境問題など地球規模課題への対応が容易になるという指摘:各個人が同じ「正義感」あるいは善の規範に従うようになれば、個別最適ではなく全体最適での協力体制が成立しやすい。

社会制度コストの削減:刑法・警察・刑務所・裁判所が不要となるという構想により、制度維持コスト・人材コストなどが削減

③ 批判の視点(デメリット・問題点)

③ 批判の視点(デメリット・問題点)
創造性・多様性の喪失:すべての人が同一の正義・同一の性質・同一の行動規範へ調整されるならば、異なる思考・異なる価値観・異なる文化が失われ、創造的・革新的な発明や文化活動が停滞する恐れ。

人間らしさの損失・アイデンティティの軽視:技術的に人間の「欲望」や「自尊心」「暴力性」を改変するという考えは、人間の根源的な存在性・尊厳を侵害する可能性がある。

技術主導・制度設計への依存の危険:技術が万能・中立ではない以上、そもそも誰が「正義」「善」を定めるのか、その決定過程・権力構造・恣意性の問題が浮上する。
人間対AI・機械の関係:創造力を人間が失うと、最終的に機械・人工知能が人間を代替するというリスクを高めるとの指摘もある。

④ 解答をより高めるための視点

④ 解答をより高めるための視点
利点・批判双方を書いたうえで、解決策・折り合いの提示があるとさらに良い。例えば、倫理的ガイドラインの確立、多様性の尊重、技術利用における民主的意思決定、芸術や文化支援の制度設計など。

出題テーマが法学部向けなので、「技術的支配と法・制度の関係」「人権・自由・正義」の観点から論じると説得力が高まる。

課題文が提示する未来国家像を「要約」+「共通点抽出」+「自分の意見・評価」という構成を守ること。過去の解説でも要点整理の必要性が指摘されている

スポンサーリンク

未来国家(慶應法2012)についての解答例

未来国家Ⅰと未来国家Ⅱで共通する考え方は、科学技術を活用して医療や研究の分野において革新的な手法を導入し、犯罪を防ぎつつ、人間を善に導くための規範を確立しようとするものである。結果として、平和な国家が誕生し、社会秩序が保たれるとしている。

前者では、国民の脳に生まれてすぐに、脳波探知機と送信装置、そしてショック装置を結合した小器具を埋め込み、幼児の度に不適切な思考が起こると電気ショックを与えた。持続的なコントロールの結果、人々は犯罪意志を完全に抱かなくなり、刑法・警察・刑務所・裁判所が不要となった。

後者では、遺伝子工学を用いて、暴力的な人間や自尊心が強すぎる人間を遺伝子段階で取り除き、正義の規範を担う遺伝子を促進する培養政策が採用された。これにより、人間性に根ざした欲望までが排除された。

課題文に述べられたような未来国家が実現する利点は多岐にわたる。戦争や犯罪の撲滅だけでなく、世界的な問題である地球環境問題の解決にも寄与するだろう。具体的には、地球環境汚染問題が挙げられます。これまで何度も議論されてきたこの問題に対して、個々の人間が引き起こす環境汚染に対処する他に解決策はないと言える。人間は生存本能からくる目先の利益を追求する生き物だ。しかし、仮に人類全体が同じ正義感に基づいて制御されるならば、この人間の特性が変化し、環境問題への共同の協力が生まれるだろう。したがって、悪化し続ける地球環境は対処可能な問題に変容するだろう。

これに対するデメリットとして、創造性が失われる可能性があることだ。人間は異なる思想や考えから生まれる多様な芸術や製品を生み出してきました。仮に皆が脳や遺伝子を改変され、同じ正義の規範を持つクローンのような存在になれば、創造性が枯渇し、今ある文化が失われるかもしれない。また、将来的に人工知能が発達しても、人間が勝ると言われている創造力を失うことは、人間が人工知能に取って代わられる可能性を高め、最悪の場合、人類の存続を脅かす可能性がある。

(一般論)たとえばの解決策の例

■倫理的なガイドラインの確立
脳や遺伝子の改変に関する倫理的なガイドラインを確立し、守られるようにすることが重要です。これにより、悪用や一極化が防がれ、社会全体の利益が考慮されます。

■多様性の尊重と促進
技術の進歩によってもたらされる均一化の中で、個々の多様性を尊重し、促進する仕組みを構築します。異なる文化や思想を尊重し、それに基づく創造性を奨励することが重要です。

■教育の重視
創造性を促進する教育システムを構築し、個々の才能やアイデンティティを尊重することが必要です。教育は多様性を育む場であり、人々が独自の視点やスキルを発展させる手助けをするべきです。

■技術の利用に対する民主的な意思決定(※法学部志望なのでこの辺りの言及はほしい)
技術の進歩に関する意思決定は民主的かつ透明であるべきです。市民参加や専門家の意見を取り入れながら、技術が社会全体に与える影響について議論し、適切な制約や規制を導入します。

■アートと文化の支援
改変技術が進む中で、アートと文化の重要性を強調し、これらの領域に対する支援を継続することが必要です。アートや文化は人間の創造性とアイデンティティの表現手段であり、これを維持することが社会の豊かさに繋がります。

小論文
スポンサーリンク
【大好評】大学入試小論文講座
プロの講師が24h以内に添削返信してくれる通信(メール)完結型の大学入試小論文講座。一人ひとりの志望大学・学部に合った講座で、自分のぺースで講座を進めていけます。
シェアする

コメント

テキストのコピーはできません。