大学入試小論文「美しく感じるもの」解答例｜書き方のポイントと構成法

大学入試小論文で「美しく感じるもの」というテーマが出題された際、どのように自分の感覚や経験を論理的に文章にまとめるかは多くの受験生にとって悩ましい課題です。本記事では、具体的な解答例を通して、導入部分での関心の引き方、論じる部分での論理的展開、結論でのまとめ方など、大学入試小論文で高評価を得るためのポイントを詳しく解説します。読者が実際に自分の考えを整理し、説得力のある文章を書けるようサポートします。

大学入試小論文「美しく感じるもの」の書き方ポイント

1. 導入部分：関心を引きつける

• 自分が美しいと感じる対象を具体的に提示する。例：自然、芸術作品、人の行動など。
• なぜ美しいと感じるのかを簡単に触れ、読者の興味を引く。
• 一文で文章の方向性や主張を示すと、論理の軸が明確になる。

2. 論じる部分：具体例と理由を示す

• 美しいと感じる対象を具体的に挙げ、どのような点が美しいのかを詳しく説明する。
• 感覚的な印象だけでなく、文化的背景や社会的意義など論理的な観点も加えると説得力が増す。
• 複数の例を組み合わせる場合は、共通点や対比を示しながら整理する。

3. 結論部分：まとめと示唆

• 文章全体の論点を簡潔にまとめる。
• 美しいものを感じる経験が自分や社会に与える意味や価値を示すと印象が良い。
• 独自の視点や考察で締めると、文章にオリジナリティが生まれる。

4. 表現の工夫

• 具体的で鮮明な描写を心がける（色・形・音・感情など）。
• 抽象的表現は避けすぎず、感覚と言葉をバランスよく使う。
• 接続詞や段落構成を意識し、論理の流れを明確にする。

5. 書く前の準備

• 自分が美しいと感じるものをリストアップして理由を整理する。
• どの例を中心に文章を構成するか決め、導入→論述→結論の流れをざっくり設計する。
• 字数や時間を考慮し、端的で説得力のある表現を心がける。

【ある人の例】美しいものの小論文解答例

私の周囲には、美しい人、美しい物、美しい風景など、心を惹きつけるものが多く存在する。私にとって最も美しいと感じるのは「人の行い」である。特に思いやりや優しさに触れた瞬間、その美しさは心の奥底に深く響き、時に人生の方向性を照らす光となる。人の行いには、形あるものを超えた普遍的な価値が宿るのだ。

私は家庭の事情により高校進学を一度断念せざるを得なかった。現在、通信制高校三年生として学び直す機会を得ているが、同級生の多くが10代や20代の若者であることから、当初は疎外感を抱き、交流を避けていた。「疎まれたくない」という思いが強く、登校日でも誰とも話さない日々が続いた。しかし、その考えは同級生の行動によって大きく変化した。

ある日、ランチルームで数学のレポートに行き詰まっていた私に、一人の男子学生が自然な笑みを浮かべながら回答のヒントを示してくれた。また、別の日には、生物の授業で鶏頭の解剖に戸惑う私に、別の男子学生が「大丈夫だよ」と声をかけ、共感を示してくれた。さらに、体育の苦手な私とペアを組み、一緒に練習に励んでくれた女子学生もいた。これらの行為はいずれも指示や義務によるものではなく、彼ら自身の内発的な思いやりから生じたものである。

この経験を通して私は、「美しい」とは外見や形式的な完璧さに宿るものではなく、他者に対する思いやりや優しさ、そして無償の支援にこそ存在することに気づかされた。些細な行動の積み重ねが、人の心に深い感動と勇気を与え得るのである。彼らの姿は、まるで暗闇の中で道を照らす光のように、私の迷いや不安を和らげ、前進する力を与えてくれた。

さらに、この気づきは個人的な感情の問題にとどまらず、社会的な視点からも価値を持つ。人々が互いに思いやりを示し、助け合う行動は、信頼と連帯の基盤を形成し、より豊かで持続可能な社会を創造する力となる。美しさは決して抽象的な概念ではなく、具体的な行為を通じて現実世界に影響を与えるものである。

総じて、私にとっての「美しく感じるもの」とは、人の行いに宿る無償の思いやりである。これからの人生において、この価値観を胸に、他者への配慮を忘れず生きることが、私自身の成長と社会貢献につながると確信している。

【一般論】美しいと感じるもの

①人の行いに表れる誠実さや努力
たとえば、仲間を思いやる心や、他者のために尽くす姿勢には強い美しさを感じます。特に、誰かが目立たないところで努力し続け、その成果が周囲に広がる瞬間に、人間の内面の輝きを見ます。

②伝統的な日本の書道
私自身が書道を長年続けていることもあり、墨の濃淡や筆の動きに生命を感じます。一見無駄のない線の中に、書き手の感情や集中力が込められており、その一瞬の表現が不変の形で残る点が非常に魅力的です。特に、書道は単に文字を書く以上のもので、静寂の中で生まれる緊張感と解放感のバランスが美しさを生むのだと思います。

③映画や音楽
映像や音が絶妙に組み合わさり、一瞬のうちに感情を揺さぶるようなシーンには、計り知れない感動があります。たとえば、映画の中で光と影の使い方が巧みである場面や、音楽が心情に寄り添うように響く瞬間は、何度見ても新たな発見と感動を与えてくれます。

④その他
自然の風景：朝焼けや夕焼け、星空、山や海などの雄大な景色。
季節の移ろい：桜の花や紅葉、雪景色、新緑の木々など。
アートとデザイン：絵画、彫刻、建築、映画の美しい映像表現。
人の表情：喜びや感動が表れた自然な表情。
言葉：詩や文学、美しい響きを持つ言葉の表現。
文化的な風景：歴史ある街並みや伝統的な祭りの光景。
光と影：自然光や人工照明が作り出すコントラスト。
努力の結晶：スポーツや芸術での真剣なパフォーマンス、感動的な結果。
動物の仕草：自然で無垢な動物たちの行動や表情。

美とは、ただ形や見た目に宿るものではなく、人の思いや努力、自然の一瞬の営みの中に、静かに存在しているものだと思います。その美しさに気づくことで、自分自身もまた、より良い行動をとれるのではないかと考えています。