【2012年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「未来国家」

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平成24年度【2012年度】慶應義塾大学法学部小論文解答例「未来国家」です。

【問題】以下の文章は1994年に公刊された「国家の未来」と題する論考で示されたいくつかの未来国家像のうち二つを抜粋したものです。これを読み「未来国家Ⅰ」と「未来国家Ⅱ」に共通する考え方を簡潔にまとめたうえで、それに対する擁護と批判の両方を展開しなさい。
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未来国家(慶應法2012)についての解答例

未来国家Ⅰと未来国家Ⅱで共通する考え方は、犯罪を犯してしまうような人間を排除し、人類を皆正義の規範に従うように変えてしまおうというものである。前者は、国民の脳に生まれてすぐに、脳波探知機と送信装置、そしてショック装置を結合した小器具を埋め込むことで、幼児から不埓な思考が起こる度に、電気ショックを受けさせる。そしてコントロールを受け続ける結果、人々は犯罪意志を全く抱かなくなり、刑法・警察・刑務所・裁判所も必要なくなる。後者は遺伝子工学の活用によって、生得的属性の変革を行うものである。暴力的な人間や自尊心の強すぎる人間は、遺伝子の段階で除去され、正義の規範を担う遺伝子が発見され、それを促進させるような培養政策がとられる。これによって、人間性に深く根ざした欲望までが排除することができる。以上が未来国会Ⅰと未来国会Ⅱの概要とその共通点である

課題文で述べられたような未来国家が実現する利点は多くある。戦争や犯罪がなくなるだけでなく、世界遺産の重大な問題が解決するだろう。具体的には、地球環境問題が挙げられる。地球の環境汚染は、これまで何度も世界中で議論されてきた。しかし環境汚染は、世界中の人々一人一人によって引き起こされているため、彼ら全員が意識的にこの問題に取り組む他に解決策はない。人間は目先の利益を追求する生き物であるから。それが将来悪影響を与えるとわかっていても、環境汚染を続けてしまうのだ。しかし、もし人類が同一の正義感で制御されたら、この人類の特性をなくなって皆が同じ目標である環境問題の解決へと協力するだろう。したがって、悪化し続ける地球環境は対処できる問題へと変わることになる。

これに対してデメリットとして挙げられるのが、創造性がなくなってしまう恐れがあることだ。人間は皆違う異なる思想や考えのもとで、多くの美術・文字・映画などの芸術が隆盛したり、様々な製品が発明されたりした。もし皆が脳や遺伝子などを改変され全く同じ正義の規範も持つクローンのような存在になってしまったら、創造する力は失われ、先に述べたような文化はなくなってしまうだろう。また将来、人工知能が発達しても、人間が勝ることができると言われている能力である創造力を失ってしまうことは、人間が人工知能に取って代わられるという可能性を最大限に高め、最悪の場合、人類を滅亡させることに繋がってしまうかもしれない。

未来国家(慶應法2012)についての解答例(添削一部抜粋)

(原文△)「未来国家Ⅰと未来国家Ⅱで共通する考え方は、犯罪を犯してしまうような人間を排除し、人類を皆正義の規範に従うように変えてしまおうというものである。」
(修正案)「未来国家Ⅰと未来国家Ⅱで共通する考え方は、科学技術を活用して医療や研究の分野において革新的な手法を導入し、犯罪を防ぎつつ、人間を善に導くための規範を確立しようとするものである。結果として、平和な国家が誕生し、社会秩序が保たれるとしている。」

→1点目「犯罪…罪を犯す行為」なので、(×)犯罪を犯す人→(○)罪を犯す人と表現します。
→2点目「科学技術を活用して医療や研究の分野において革新的な手法を導入し」のように、脳波探知機(未来国家Ⅰ)と遺伝子工学(未来国家Ⅱ)の手法をまとめて簡潔に述べた方がいいです。「共通する考え方は、AによってBを確立する」という具合です。
→3点目「結果論」も記述するといいでしょう。「共通する考え方は、AによってBを確立する。その結果Cである。」

<全体修正案>内容を変えずに
未来国家Ⅰと未来国家Ⅱで共通する考え方は、科学技術を活用して医療や研究の分野において革新的な手法を導入し、犯罪を防ぎつつ、人間を善に導くための規範を確立しようとするものである。結果として、平和な国家が誕生し、社会秩序が保たれるとしている。

前者では、国民の脳に生まれてすぐに、脳波探知機と送信装置、そしてショック装置を結合した小器具を埋め込み、幼児の度に不適切な思考が起こると電気ショックを与えた。持続的なコントロールの結果、人々は犯罪意志を完全に抱かなくなり、刑法・警察・刑務所・裁判所が不要となった。

後者では、遺伝子工学を用いて、暴力的な人間や自尊心が強すぎる人間を遺伝子段階で取り除き、正義の規範を担う遺伝子を促進する培養政策が採用された。これにより、人間性に根ざした欲望までが排除された。

課題文に述べられたような未来国家が実現する利点は多岐にわたる。戦争や犯罪の撲滅だけでなく、世界的な問題である地球環境問題の解決にも寄与するだろう。具体的には、地球環境汚染問題が挙げられます。これまで何度も議論されてきたこの問題に対して、個々の人間が引き起こす環境汚染に対処する他に解決策はないと言える。人間は生存本能からくる目先の利益を追求する生き物だ。しかし、仮に人類全体が同じ正義感に基づいて制御されるならば、この人間の特性が変化し、環境問題への共同の協力が生まれるだろう。したがって、悪化し続ける地球環境は対処可能な問題に変容するだろう。

これに対するデメリットとして、創造性が失われる可能性があることだ。人間は異なる思想や考えから生まれる多様な芸術や製品を生み出してきました。仮に皆が脳や遺伝子を改変され、同じ正義の規範を持つクローンのような存在になれば、創造性が枯渇し、今ある文化が失われるかもしれない。また、将来的に人工知能が発達しても、人間が勝ると言われている創造力を失うことは、人間が人工知能に取って代わられる可能性を高め、最悪の場合、人類の存続を脅かす可能性がある。

<さらに高みを目指して>
デメリットの記述のあとに、解決策を提示できるとよかったです。

たとえばの解決策の例

■倫理的なガイドラインの確立
脳や遺伝子の改変に関する倫理的なガイドラインを確立し、守られるようにすることが重要です。これにより、悪用や一極化が防がれ、社会全体の利益が考慮されます。

■多様性の尊重と促進
技術の進歩によってもたらされる均一化の中で、個々の多様性を尊重し、促進する仕組みを構築します。異なる文化や思想を尊重し、それに基づく創造性を奨励することが重要です。

■教育の重視
創造性を促進する教育システムを構築し、個々の才能やアイデンティティを尊重することが必要です。教育は多様性を育む場であり、人々が独自の視点やスキルを発展させる手助けをするべきです。

■技術の利用に対する民主的な意思決定(※法学部志望なのでこの辺りの言及はほしい)
技術の進歩に関する意思決定は民主的かつ透明であるべきです。市民参加や専門家の意見を取り入れながら、技術が社会全体に与える影響について議論し、適切な制約や規制を導入します。

■アートと文化の支援
改変技術が進む中で、アートと文化の重要性を強調し、これらの領域に対する支援を継続することが必要です。アートや文化は人間の創造性とアイデンティティの表現手段であり、これを維持することが社会の豊かさに繋がります。

小論文
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