大学入試小論文「過疎地域を見捨てない社会へ」高齢者の力を活かす持続可能な地域づくりとは

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日本各地で進行する過疎化は、人口の都市部集中と高齢化により、地域の存続そのものを揺るがす深刻な問題となっている。特に、医療・福祉・交通といった生活基盤の維持が困難となり、非効率だからと地域への支援を縮小する声も強まっている。しかし、本当に「効率性」だけを優先してよいのだろうか。本稿では、過疎地域の未来を高齢者の力と地域の特性に着目して再構築する可能性について考察し、持続可能な社会の在り方をある人の解答例をもとに考察、添削する。

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【予備知識】過疎地域の現状と対策

過疎地域の現状

過疎地域の現状図解

主な問題点

過疎地域の問題点図解

  • 人口減少・高齢化…若年層の都市部流出により、高齢化率が急速に上昇し、地域の活力が低下
  • 経済基盤の脆弱化…産業の衰退により雇用機会が減少し、経済活動が停滞
  • 生活インフラの維持困難…医療・教育・交通等のサービス維持が困難となり、生活環境が悪化
  • 集落機能の低下…共同体としての機能が低下し、伝統文化の継承も困難に
対策・解決策

過疎地域の解決策・対策図解

  • デジタル化推進…ICT技術を活用した遠隔医療、オンライン教育、テレワーク環境の整備により、都市部との格差を縮小
  • 移住・定住促進…住宅支援、就業支援、子育て支援等の充実により、都市部からの移住者を獲得
  • 地域資源活用…地域の特産品、観光資源、伝統文化を活用した産業振興と雇用創出
  • 小さな拠点づくり…複数集落の機能を集約し、効率的なサービス提供体制を構築
成功事例

❶大分県国東市 – デジタル化による地域連携
高齢者から若者まで誰でも使いやすいデジタル化を推進。地域づくり支え合い活動共通Webサイト「国東つながる暮らし」を通じて、住民同士の情報共有と交流を活性化。

❷各地の移住支援制度
住宅取得支援、就業支援、子育て支援等の総合的な移住支援パッケージにより、都市部からの移住者獲得に成功している自治体が増加。

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ある人の解答例「過疎地域の可能性と高齢者活躍の未来」

過疎地域では、人口や戸数が少ないため、行政サービスをカットしその地域に住んでいる人々を一部の場所に集中させることで、コストが削減できるという意見がある。その一方、全国の人々には、生存権があり、どこにいても、行政サービスにより一定水準の暮らしを保護するべきという論点もある。では、実際にこれからは、過疎地域での行政サービスを続けていくべきか。

確かに、都市部より過疎地域にかかるコストの方が高いため、過疎地域でのコスト削減を行い、特定の地域に人口を集中させた方が効率的だ。現在、若年層の都市部への流出が進んでいる一方、過疎地域における高齢者の人口過剰が問題になっている。従って、政府は、医療・介護・福祉などに多くの資金を出し、地方自治体の税収や予算が不足し、国全体の行政サービスが衰退されていくに違いない。そうなれば、全ての国民に安定した暮らしを提供することはできなくなるため、過疎地域に対するコストカットし、人口を特定の一部に収集させるのが望ましいと考える。これは、その地域での、行政サービスの質が上がり、全ての国民は平等に安定とした暮らしを保てるようになるだろう。

しかし、人口集中させることにより、逆にその地域での過密化が進み、生活環境が悪化する恐れがある。具体的には、交通渋滞や住居不足などの問題が深刻なる。なぜなら、道路網や住居の場は想定された人口に基づいて作られている、急激に人口が増加すれば、その対応できるレベルを超えてしまい渋滞や居場所はなくなってしまう可能性がある。さらに、交通手段の利用の頻繁や工場での大量生産により、環境の負荷が増大する大量な二酸化炭素が排出され、大気汚染や水質汚染などの環境問題を悪化させ、国民が健康的な生活を保障できなるくなる可能性がある。

したがって、一部に人口を集めるにより、過疎地域での高齢者が貢献できる仕組みの整備に力を入れた方が良い。例えば、在宅ワークや子供の指導役など高齢者の経験を生かした職業を増やすことで、政府の負担を小さくすることができる。過疎地域における行政サービスを提供し、高齢者もこのように貢献すれば、お互い支え合う社会を築いていくことができる。財政の負担を減らすことによって、政府の税収が保たれ、国民全体が安定とした行政サービスを享受することができるのだ。

以上のように、過疎地域での行政サービスを続け、高齢者も働ける環境を形成していくことが、お互いが抱えている負担を軽減することができる。お互い支え合う社会により、人々は、より良質な生活を送られるだろう。

アドバイス「過疎地域を見捨てない社会へ」

1.文中の冗長な表現をシンプルにする

内容の繰り返しや、過剰な言い回しを避けて、読みやすさを向上させましょう。たとえば「過疎地域に対するコストカットし、人口を特定の一部に集中させるのが望ましいと考える。」→「過疎地域でのコスト削減と人口集中が望ましいと考える。」

例:「過疎地域における高齢者人口の増加は、財政に大きな負担をかける。」

2.具体例の表現をさらに明確にする

具体例(交通渋滞、環境汚染など)の説明が若干冗長に感じられる箇所があります。具体例を示した後に、その問題が発生する原因を短く補足すると読みやすくなります。

例:「人口集中による交通渋滞や住居不足の問題も深刻である。急激な人口増加は、地域の既存インフラに負担をかけるからだ。」

3.意見と根拠を整理してわかりやすく構成する

各段落で意見を述べた後、その根拠や具体例を追加し、最後にまとめると論理が整理されます。

例:「したがって、高齢者が過疎地域で貢献できる職場環境を整えることは、財政負担を軽減し、持続可能な社会の実現につながるだろう。」

4.言葉の表現と文法の修正

一部の表現がわかりにくい箇所があり、文法的な修正も必要です。例えば以下のように改善できます。

➀「従って、政府は、医療・介護・福祉などに多くの資金を出し、地方自治体の税収や予算が不足し、国全体の行政サービスが衰退されていくに違いない。」
➨「政府が医療・介護・福祉などに多額の資金を投入する必要がある一方で、地方自治体の税収不足や予算不足により、行政サービスの質が低下する恐れがある」というように、分かりやすく再構成することができます。

➁「渋滞や居場所はなくなってしまう可能性がある」「居場所」という表現が少し曖昧です。
➨「住居の不足や公共施設の過密化」とする方が具体的です。

➂「お互い支え合う社会を築いていくことができる」
➨「相互扶助の社会」といった表現を使うと、より簡潔に伝わります。

アドバイスを踏まえた全体修正案

過疎地域では人口が少ないため、行政サービスを削減し、一部地域に住民を集めることでコストを削減すべきだという意見がある。一方で、生存権は全国民に等しく保障されるべきであり、どこに住んでいても一定水準の行政サービスが提供される必要があるとの主張もある。では、実際にこれから過疎地域での行政サービスを続けるべきなのだろうか。

確かに、都市部に比べ過疎地域への行政コストは高く、人口を特定の地域に集約する方が効率的だといえる。現在、若年層は都市部へ流出し、過疎地域には高齢者が増加しているため、医療や介護、福祉への負担が増大している。このままでは、地方自治体の財政が逼迫し、国全体の行政サービスの質が低下し、安定した生活を保障することが難しくなるだろう。そのため、過疎地域の行政サービスを削減し、人口を集中させることで行政サービスの効率化を図るのが望ましい。こうすることで、限られた資源を活用しつつ、全体的なサービスの質を向上させることが期待される。

しかし、人口集中によって新たな問題が生じる可能性も否めない。たとえば、急激な人口増加は交通渋滞や住居不足といった課題を引き起こし、地域の生活環境が悪化する恐れがある。既存のインフラはもともと想定された人口規模に基づいて整備されており、対応が間に合わなければ、住民の生活の質が低下するだろう。また、人口集中は環境負荷の増加にもつながり、大気汚染や水質汚染などが悪化し、国民の健康が損なわれる危険性もある。

したがって、過疎地域に住む高齢者が地域社会に貢献できる仕組みづくりを進めるべきである。具体的には、在宅ワークや子供の教育支援など、高齢者の経験を生かせる職業を増やすことで、地域内での経済活動が活性化し、行政コストの削減にもつながる。このように過疎地域で行政サービスを提供し続けることで、高齢者も社会の一員として貢献し合える環境を整えられる。結果として、財政負担が軽減され、国全体で安定した行政サービスを享受できるだろう。

以上のように、過疎地域においても行政サービスを継続し、高齢者が役割を持って貢献できる環境を整えることが、社会全体の安定と持続可能な発展につながると考える。お互いに支え合う社会を構築することで、すべての人々がより良質な生活を送れるようになるはずである。

(一般論)地域の行政サービスの効率性や採算性の向上の具体策

➀デジタル化と情報技術の活用
行政サービスをデジタル化し、情報技術を活用することで、業務の効率性が向上します。オンラインでの手続きや電子行政サービスの提供により、手間や時間の削減が期待できます。また、データ分析やビジネスインテリジェンスを活用して、業務プロセスの最適化やリソースの適切な配置が可能です。

➁サービスの統合と一元管理
重複するサービスを統合し、一元管理することで、無駄なコストを削減できます。異なる部門や機関間で情報を共有し、協力して業務を進めることで、シームレスなサービス提供が可能になります。
➂市民参加の促進
行政サービスの開発や改善において、市民参加を促進することが重要です。市民の意見やフィードバックを収集し、それをもとにサービスを改良することで、サービスの質が向上し、採算性が向上する可能性があります。

➃パートナーシップの構築
地域の行政は他の行政機関や企業、非営利団体などとの協力を強化することで、サービスの効率性を高めることができます。外部の専門機関や企業と提携し、サービス提供のアウトソーシングや共同プロジェクトを進めることが考えられます。

➄効果的な予算編成と評価
予算を効果的に編成し、サービス提供の成果を評価することが不可欠です。予算の透明性を確保し、結果に基づいた効果的な意思決定を行うことで、採算性の向上が期待できます。

⑥効率向上のための訓練と技術投資
行政職員のスキル向上や最新の技術への投資を行うことで、業務の効率が向上します。トレーニングプログラムや新しいテクノロジーの導入により、行政サービスの品質と速度が向上し、結果として効率性も向上するでしょう。

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