近年、障害者への無意識な差別や偏見が社会問題として再び注目されている。特に、公共交通機関や学校、職場など、日常のあらゆる場面で障害者が不当な扱いを受けるケースは少なくない。大学入試小論文では、このような「障害者差別をどのように防ぐか」というテーマが頻出である。本記事では、最新の調査データをもとに、日常生活における支援体制と法制度の両面から、障害者差別の解消に向けた対策を論理的に考察する書き方のポイントと解答例を紹介する。
障害者差別の解消に向けた対策を論理的に考察する書き方のポイント
①【問題提起】現状と課題を明確にする

まず冒頭では、障害者差別がどのような形で存在しているのかを、
具体例やデータを用いて示すことが重要です。
例:近年、公共交通機関や職場など日常生活の中で、障害者に対する無意識な差別や偏見が問題となっている。
このように書くことで、「なぜこのテーマが社会的に重要なのか」を明確にできます。
- ニュース・調査データ・具体的事例を引用して説得力を高める。
- 「差別が残る背景」まで触れると論理の深みが出る。
② 原因分析:差別が生まれる構造を示す

差別を生む要因を複数挙げ、原因と結果の関係を論理的に説明する。心理・社会・制度の観点から分析すると深みが増す。
- 理解不足・固定観念
- 情報や教育の欠如、法制度の周知不足
- メディア表現や職場文化の影響
③ 具体的対策(=日常面)

家族・友人・地域コミュニティでの支援体制づくりや相談しやすい環境の整備を提案する。個人レベルで実現可能な方法を挙げ、「実行可能性」まで言及する。
- 相談窓口やピアサポートの普及
- 学校・職場での当事者の意見を反映する仕組み
- 啓発ワークショップや地域イベントの開催
④ 具体的対策(=制度・政策面)

障害者差別解消法などの法制度の周知徹底、合理的配慮の定着、行政の啓発活動などを挙げる。国・自治体・企業・市民それぞれの役割分担を明確にする。
- ハンドブック配布、学校教育への組込み
- 企業のガイドライン作成と研修義務化(例示的に)
- 相談窓口の連携強化とワンストップ化
⑤ 結論:日常と制度の両面からの総合的アプローチ

日常的な意識改革と法制度の充実を両輪として提示し、両者が連動することの重要性を簡潔にまとめる。結論では「共生社会の実現」という大きな目標に結びつける。
書き方の実践的ポイント(表現・語彙)
- 接続詞は論理を示すために慎重に使う(例えば「したがって」「そのため」「一方で」)。
- 感情的表現は避け、客観的な言い回しを心がける。
- 「合理的配慮」「共生社会」「多様性の尊重」などの専門語は適切に使用する。
- データや事例を引用する場合は出典を明示(入試答案では「調査によれば」等の表現で可)。
段落構成と文字数配分(800字前後の目安)
| 段落 | 内容 | 目安文字数 |
|---|---|---|
| ① | 問題提起(現状・重要性の提示) | 約100字 |
| ② | 原因分析(構造的要因の整理) | 約150字 |
| ③ | 対策(日常面) | 約200字 |
| ④ | 対策(制度面) | 約200字 |
| ⑤ | 結論(両面の統合) | 約150字 |
【ワンポイント】入試答案では「原因→対策→結論」の流れがもっとも評価されやすい。具体性(誰が・何を・どのように)を明確に書くことが鍵。
【ある人の解答】障害者差別への対策について
長野パラリンピックの組織委員会が作成したポスターに、身体障害者に対する差別的な表現が含まれていたとして批判が集まった。この問題は、社会の中に依然として残る障害者への無意識な差別や偏見の存在を示していると言える。したがって、身体障害者のみならず精神障害者をも含め、あらゆる障害者が差別から守られる社会の実現に向けて、日常生活と制度の両面から改善策を考える必要がある。
まず、日常面からの対策として、障害者が差別的な言動や扱いを受けた際に、家族や友人へ相談する環境づくりが重要である。障がい者総合研究所の「障害者に対する差別や偏見に関する調査」によれば、「日常生活において差別や偏見を受けた」と回答した者は約60%に上り、特に「公共交通機関で差別を感じた」と答えた者は約30%であった。しかし、「差別や偏見を受けた際に家族や友人に相談した」と回答したのは約30%にとどまり、「専門機関に相談した」と答えた者も約20%にすぎない。これらの結果から、多くの障害者が差別を受けても相談できず、孤立している現状が浮き彫りとなる。したがって、障害者が安心して悩みを共有できる身近な人間関係の構築が、差別を軽減する第一歩となるだろう。
次に、制度面からの改善策として、障害者差別解消法のさらなる周知と定着が挙げられる。同法は平成28年に施行され、差別の禁止と合理的配慮の提供を定めたが、社会への浸透は十分とは言えない。内閣府の平成28年度「障害者に関する世論調査」によると、「障害者差別解消法を知っている」と答えた人は約20%にとどまっている。法の理念を社会全体に根付かせるためには、地方自治体による積極的な普及活動が求められる。実際に、佐賀県の障害福祉課は「ハンドブックを約8500部作成し、県内の事業所や学校に配布する」取り組みを行っており、このような事例を全国的に広げることが有効である。法の認知度が高まれば、障害者への理解と共感も深まり、差別の未然防止につながると考えられる。
以上のように、障害者への差別をなくすためには、身近な人間関係の中で相談できる環境づくりと、障害者差別解消法の社会的浸透という両面からの取り組みが不可欠である。制度を知り、支え合う意識を社会全体が共有することで、身体・精神にかかわらず、すべての人が安心して生活できる共生社会の実現が期待される。
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