2026年2月28日、アメリカとイスラエルはイランに対して大規模な軍事攻撃を実施しました。最高指導者ハメネイ師を含む政府高官の死亡が報じられるや否や、世界の金融市場は即座に反応。原油先物価格は一時14%超急騰し、S&P500や日経平均は大幅安でスタートしました。
「これは一時的な動きなのか、それとも長期の下落トレンドの始まりなのか」—多くの投資家がそう感じたはずです。
結論から言えば、今後の株価の行方はシナリオ次第です。過去の中東有事を振り返ると、市場は必ずしも一方向に動くわけではありません。1973年の第一次オイルショックでは株価が半値近くまで下落した一方、2003年のイラク戦争では「開戦後は買い」が作動して反発。2025年6月に米軍がイラン核施設を攻撃した際も、1ヶ月後には+5%を達成しました。
重要なのは「どのシナリオに向かうのか」を早い段階で見極めることです。
この記事では、米・イラン軍事衝突後の株式市場を次の3つのシナリオに整理して解説します。
- シナリオA|短期収束:停戦・沈静化によりV字回復
- シナリオB|中期混乱:ホルムズ封鎖・長期化で持続的下落
- シナリオC|最悪事態:中東全域拡大・世界同時株安
さらに、それぞれのシナリオで注目すべきセクターと資産、そして市場の分岐点となる6つのチェックポイントもあわせてお伝えします。地政学リスクに直面したとき、パニックにならず冷静に判断するための材料として、ぜひ最後までお読みください。
アメリカのイラン攻撃の概要:何が起きたのか
2026年2月28日(土)深夜、米軍とイスラエル空軍は合同作戦のもと、イランの核施設・軍事拠点・指導部を標的とした大規模な精密攻撃を実施しました。この作戦は翌朝の報道で一斉に伝えられ、週明けの東京市場が開く前から先物価格・為替・金属相場に激震が走りました。
イラン側はただちに「全力で報復する」と宣言。ホルムズ海峡の封鎖を示唆する声明も飛び出し、世界のエネルギー市場は一気に緊張感を高めました。ホルムズ海峡は世界の原油輸送量の約20%が通過する「石油の咽喉部(のどもと)」であり、ここが機能不全に陥れば原油供給ショックが世界経済を直撃します。
・米・イスラエルによるイラン軍事施設・指導部への大規模精密攻撃
・最高指導者ハメネイ師ほか複数の政府高官が死亡と報道
・イラン側は即座に報復と「ホルムズ封鎖」を示唆
・週明け市場開場前から先物・為替・金相場が急変動
こうした事態は「有事」そのものです。市場はまず「とにかく売れ」という反射的なリスクオフ行動をとります。しかしその後の値動きは、情勢が実際にどの方向へ展開するかによって大きく異なります。
攻撃直後の市場反応

週明け最初の取引日、主要市場は軒並み大きく動きました。ただし「すべてが下落した」わけではありません。リスクオフの売りと、有事特有の「買われる資産」が明確に分かれたのが特徴です。
特筆すべきは原油価格の急騰幅です。WTI先物が一時14%超上昇したことは、市場がホルムズ海峡封鎖というリスクを現実として織り込み始めたことを意味します。一方、株式市場の下落は「1〜3%」にとどまっており、パニック売りというよりは「様子見の売り」の色彩が強い初動でした。
「有事の最初の反応は感情的。しかし市場が本当に動くのは、その後の”シナリオの確定”を待ってからだ」—マーケットアナリストの間でよく言われる言葉です。
つまり、この段階では「買い場か逃げ場か」はまだ判断できないのです。そのためにも、今後のシナリオを整理しておくことが重要になります。
今後の3シナリオ全体像
中東有事が株式市場に与える影響を考えるうえで、最も重要なのは「紛争がどこまで広がるか」「どのくらいの期間続くか」の2軸です。この2軸の組み合わせにより、今後の展開は大きく3つのシナリオに集約されます。

A短期収束シナリオ ─ 数週間以内に停戦・沈静化
条件:米の仲介成功 / イランが核交渉に復帰 / 紛争が局地化
PROBABILITYやや高い
B中期混乱シナリオ ─ 数ヶ月にわたる紛争長期化
条件:ホルムズ海峡封鎖 / 代理戦争(ヒズボラ・フーシ派)激化
PROBABILITY中程度
C最悪シナリオ ─ 中東全域への拡大・世界同時株安
条件:産油国インフラ被害拡大 / 欧米連合参戦 / 第二次オイルショック級の供給激減
PROBABILITY低い(テールリスク)
各シナリオの詳細を次のセクションから順番に見ていきましょう。それぞれにおいて「株価の動き」「原油・金利への影響」「日本株への波及」「注目すべき資産・セクター」の4点を整理します。
シナリオA:短期収束(V字回復)
どんな状況か
攻撃から数週間以内に停戦合意または実質的な戦闘停止が実現し、市場の不確実性が解消されるシナリオです。具体的には、米国が外交的な仲介に動き、イランが核交渉の再開を条件に停戦を受け入れるか、あるいはイランの指導部が事実上機能不全に陥り、組織的な報復能力を失うケースが想定されます。
株価への影響
過去の事例が強く示唆するように、紛争の早期収束は「不確実性の解消」として市場に好材料となりやすいです。最も近い前例は2025年6月のOperation Midnight Hammer(米軍によるイラン核施設攻撃)で、週明けのS&P500は+1%前後の小幅な動きにとどまり、1ヶ月後には+5%を達成しました。

このシナリオで有望な投資行動
急落時の「恐怖売り」に乗じてポジションを落とすよりも、暴落を短期的な買い場と捉える視点が有効です。特に日本の輸出株・景気敏感株は円安の恩恵を受けやすく、収束後のリターンが期待できます。ただし「収束した」と確認できるまでは慎重に——ニュースの解釈は常にリアルタイムで更新する必要があります。
シナリオB:中期混乱(長期化)
どんな状況か
停戦が成立せず、ホルムズ海峡の部分的な封鎖やヒズボラ・フーシ派といったイランの代理組織による攻撃が継続し、中東の緊張が数ヶ月単位で続くシナリオです。イランの指導部が分裂・混乱して「誰と交渉すればいいかわからない」状態になるケースも、長期化につながりやすいと言えます。
株価への影響
このシナリオで最も深刻なのは原油高のインフレ長期化です。ガソリン価格の上昇は家計の可処分所得を圧迫し、個人消費の悪化を招きます。同時にコストプッシュ型のインフレが再燃することで、FRBの利下げ期待が後退し、グロース株の評価倍率(バリュエーション)に下押し圧力がかかります。

このシナリオで有望な投資行動
エネルギー株・防衛株へのシフト、および金や金ETFによるインフレヘッジが基本戦略になります。日本株においては輸出株の一部が底堅い可能性があるものの、全体としては上値追いを避け、ポジションをスリム化しておくことが賢明です。航空・旅行・自動車など原油コストの影響を直接受けるセクターは特に慎重に扱うべきでしょう。
シナリオC:最悪シナリオ(世界同時株安)
どんな状況か
紛争がイラン・イスラエル・米国の3者間にとどまらず、サウジアラビアやUAEなどの主要産油国や、NATOを巻き込んで欧州各国が参戦する形に発展するシナリオです。確率は低いものの、現実に起きれば市場への打撃は計り知れません。「テールリスク」として必ず頭の片隅に置いておく必要があります。
特に危険なシグナルはサウジアラビアの石油インフラへの攻撃です。世界最大規模の石油処理施設「アブカイク」が被害を受ければ、世界の原油供給の5〜10%が一気に失われ、第一次オイルショック(1973年)を超える供給ショックが現実になりかねません。

このシナリオへの備え方
発生確率は低いとはいえ、備えておくこと自体にコストはほとんどかかりません。ポートフォリオの一部(5〜10%程度)を金や現金に振り向けておくだけで、最悪のシナリオ時のドローダウンを大幅に軽減できます。「起きたら困る」と思うリスクこそ、小さく対策しておくのが合理的な投資行動と言えます。
市場の分岐点となる6つの注目ポイント
3つのシナリオのうち、どれに向かうかを判断するために注視すべきポイントが6つあります。これらのシグナルを継続的にウォッチすることで、シナリオの更新ができます。
1.ホルムズ海峡の封鎖有無
世界の原油輸送の約20%が通過するこの海峡が封鎖されれば、原油供給が激減し、インフレ・景気後退リスクが急騰します。シナリオBまたはCへの最大のトリガーです。封鎖が起きなければ、シナリオAの可能性が大きく高まります。
2.イランの体制崩壊・新政権樹立の有無
指導部の真空状態が生じると「誰と交渉するか」が不明になり、長期化リスクが上昇します。一方で、親米・穏健派の新政権が樹立されれば、市場は一気に織り込みを変える可能性があります。
3.FRB(米連邦準備制度)の利下げ判断
原油高によるインフレが再燃すれば利下げが遠のき、株価の重荷になります。逆に収束すれば利下げ期待が株価を押し上げる要因になります。FOMCの声明・パウエル議長の発言は必ず確認しましょう。
4.ヒズボラ・フーシ派等、代理組織の動向
イランが直接報復できない場合でも、代理組織による攻撃が続けば「実質的な長期化」になります。レバノン・イエメン・イラクでの動きを注視してください。
5.米中間選挙(2026年11月)の情勢
トランプ政権の政治的支持基盤が軍事継続の意思に影響します。支持率の大幅な低下は早期停戦への国内圧力となりうる一方、逆の動きが継戦を後押しすることもあります。
6.欧州主要国(英・仏・独)の参戦判断
NATO連合に発展した場合、リスクプレミアムは一段と拡大し、シナリオCへの移行リスクが高まります。逆に欧州が中立・仲介に回れば、早期停戦の可能性が上がります。
セクター別・資産クラス別の影響まとめ
以下は、中東有事が発生した際に各セクター・資産クラスがどう動きやすいかをまとめたものです。これらは絶対的な予測ではなく、過去の傾向と今回の事態の性質から導いた「傾向の整理」です。
株式セクター
📉 ハイテク・グロース株
リスクオフ局面では真っ先に売られやすい。バリュエーションが高い銘柄ほど下落幅が大きくなる傾向あり。S&P500の下げを主導。
📈 エネルギー・石油株
原油高の恩恵を直接受ける。エクソンモービル・シェブロン等の米系メジャーが買われやすい。長期化シナリオほど有利。
📈 防衛関連株
米・日ともに防衛費増額への期待が高まる。ロッキード・マーティン(米)、三菱重工・川崎重工(日)などが物色される。
📉 航空・旅行株
燃料コスト上昇+需要減の二重苦。中東路線の運休・縮小が直撃。短期収束シナリオでも回復には時間を要する。
📉 自動車・製造業
原材料・物流コスト上昇が利益を圧迫。円安が日本勢の下げを一部相殺する可能性はあるが、全体としてはマイナス要因。
📈 金融・銀行株(一部)
長期金利上昇局面では利ざや拡大期待から買われる場合も。ただしシナリオCの景気後退リスクが高まれば一転売られやすくなる。
資産クラス
🏅 金(ゴールド)・金ETF
地政学リスクの高まりとインフレ懸念を同時にヘッジできる資産。シナリオBおよびCでは特に有効。短期収束後は利確売りに注意。
🛢 原油関連ETF・産油国通貨
ホルムズ封鎖懸念が続く間は原油高持続。産油国通貨(ノルウェークローネ・カナダドル等)も恩恵を受けやすい。
📉 米国債(短期)
インフレ再燃局面では実質金利がマイナスになりやすく、保有コストが大きくなる。長期債はリセッション期待で買われる局面も。
💵 米ドル(短期)
有事のドル買いが発生しやすい。ただし長期化による米経済のダメージが意識されると一転してドル売りになる可能性も。
過去の中東有事と株価の反応
投資において歴史は繰り返すわけではありませんが、参考にはなります。過去の中東有事が株式市場にどのような影響を与えたか、4つの主要事例を振り返ります。

この4事例から導かれる共通の教訓は、「開戦直後の反応は感情的だが、その後は実際の被害規模と期間で決まる」ということです。特に2025年6月の前例は、「核施設への精密攻撃+指導部への打撃」という点で今回と極めて類似しており、シナリオAへの移行可能性を裏付けるものとして注目されています。
「有事における最良の投資家は、パニックにならず、シナリオを確認しながら冷静にポジションを調整できる人だ」
まとめ:投資家がとるべき行動
ここまで読んでいただいた方には、今回のイラン攻撃が「一律に株価を下げる」イベントではなく、シナリオ次第で全く異なる市場展開をもたらしうる」複雑な事象であることが伝わったと思います。最後に、3つのポイントに整理します。

今後の情勢については、本サイトでも継続的にアップデートをお届けします。新しい動きがあれば随時加筆していきますので、ブックマーク・SNSシェアなどしていただけると励みになります。
※本記事は各種報道・証券会社リポートをもとに作成した情報提供を目的としたものです。特定の銘柄・資産への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。
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