【2020年度】宇都宮大学農学部の小論文解答例「昆虫と農業」です。
【ある人の例】昆虫の減少の原因とその影響の小論文解答例
私は昆虫が減少している原因として、農業を行う際、過剰に防虫剤を使用してきたからだと思う。昆虫の中には農作物の成長を邪魔する害虫が存在する。害虫は、作物の葉や茎、根を食べて成長する。そのため、農作物は虫食いにより見た目が悪くなる。また、栄養が行き渡らず十分な大きさに育つことが困難となるため、出荷できず廃棄の対象となる。農家の人々は害虫の影響を受けないために多量の防虫剤を農作物にまいた。しかし、防虫剤は害虫だけでなく植物の受粉を行うミツバチなどにも影響を与えた。ミツバチの減少は受粉する植物の減少につながるため、スイカやイチゴなどの生産量が低下する。農家の中には筆を用いてミツバチの代わりに受粉作業を人の手で行っている。莫大な量の農作物を一つ一つ受粉させるには多くの時間を要する。また受粉期間の短い植物も存在するため、人の手で行うには限界がある。
農業に必要な昆虫の減少を抑制するためにはどうするべきか。私は農薬や防虫剤を使わない有機栽培をすることが昆虫の減少の対策になると考える。以前、有機栽培の害虫対策を調べた際に、私は自然農薬という言葉を目にした。自然農業とは化学物質を含まない酢などを農薬として使うことだ。これは土壌への負担も少ないため、土の再生速度が速くなり防虫効果とともに持続可能な農業の実現に繋がる。また、害虫を半殺しにすることで仲間に農園が危険であることを知らせるための警告用の体液を出す。これにより、同種の害虫は近づきにくくなる。
害虫を駆除する方法は、防虫剤を使用せずとも行うことが可能だ。有機栽培の促進は、SDGsに対応した次世代へ繋げる農業を行い、昆虫や農作物の生産量の減少を抑制する。以上より、私は、防虫剤により絶滅の危機にある昆虫を保護するために有機栽培を導入すべきだと考える。
【添削・アドバイス】昆虫の減少の原因とその影響
1. 導入部の改善
現状、昆虫減少の原因として「過剰な防虫剤の使用」を指摘していますが、具体性に欠けるので、具体的な統計やデータが記述できるといいです。例えば「近年、世界中で昆虫の個体数が急速に減少しており、その影響は農業や生態系全体に及んでいる」というような背景情報を加えると効果的です。
(例文)昆虫の減少は、農業や生態系全体に深刻な影響を与えている。近年の研究によれば、過去30年間で昆虫の個体数は世界的に40%以上減少したとされる。その主要因として挙げられるのが、農薬や防虫剤の過剰使用である。この問題は単に昆虫の絶滅危機にとどまらず、農作物の生産性低下や生態系の崩壊といった形で人類にも影響を及ぼしている。
2. 段落の分割と流れの工夫
現状では一つの段落がやや長く、情報量が多いため、以下のように分割すると読みやすくなります:
・害虫による農作物への被害(原因と現状)
・防虫剤の影響(問題点の説明)
・有機栽培の提案(解決策)
・有機栽培の効果と意義(メリットとまとめ)
3. 具体例の補強
「自然農薬」や「有機栽培」に関する説明が興味深いですが、具体的な実施例や成功事例があれば、説得力が増します。
(例文)有機栽培はすでに日本国内外で注目を集めている実践的な農法である。例えば、静岡県のある農家では、酢やニームオイルを活用した自然農薬による害虫対策を行いながら、土壌改良を重ねた結果、従来の化学農薬を使用する農法と比べて収穫量をほぼ維持することに成功している。また、インドでは有機栽培を採用した農園が、化学農薬を使用していた時期よりも農地の持続可能性を向上させ、長期的な収益性を確保しているとの報告がある。
4. 文末の表現を洗練
例えば、「〜と考える」や「〜べきだ」が繰り返されています。最後に結論を力強く述べることで、主張の一貫性を強調できます。
(元の文)以上より、私は、防虫剤により絶滅の危機にある昆虫を保護するために有機栽培を導入すべきだと考える。
(改善後の文)防虫剤による昆虫の減少は、農業の持続可能性を危うくする深刻な問題である。有機栽培はこの課題を解決するための効果的な手段であり、次世代に引き継ぐべき農業の形である。
【全体修正案】昆虫の減少の原因とその影響
昆虫の減少は、農業や生態系全体に深刻な影響を与えている。近年の研究では、過去30年間で昆虫の個体数が世界的に40%以上減少したとされ、その主要因の一つに農薬や防虫剤の過剰使用が挙げられている。この問題は単に昆虫の絶滅危機にとどまらず、農作物の生産性低下や生態系の崩壊といった形で人類にも影響を及ぼしている。
害虫は農作物の成長を妨げる存在である。農作物の葉や茎、根を食べる害虫は、作物の見た目を損ない、十分な大きさに育たなくさせる。その結果、出荷できない作物が廃棄されるという問題が生じる。これを防ぐために、農家は防虫剤を多量に使用してきた。しかし、防虫剤は害虫だけでなく、受粉を担うミツバチなどの有益な昆虫にも影響を与えた。その結果、ミツバチの減少が受粉作物の生産量低下を引き起こし、一部の農家では筆を用いて人の手で受粉作業を行う事態にまで至っている。しかし、この手法には時間と労力がかかり、受粉期間が短い作物には対応が難しいという課題がある。
この問題を解決するためには、防虫剤に頼らない農業の実践が必要である。その一例が有機栽培である。有機栽培では、化学農薬を使用せず、酢やニームオイルといった自然農薬を活用する。例えば、静岡県のある農家では、自然農薬を用いた害虫対策により、化学農薬を使用する従来の農法と同等の収穫量を維持することに成功している。また、こうした方法は土壌への負担を軽減し、持続可能な農業の実現にも寄与する。有機栽培ではさらに、害虫を部分的に駆除して仲間に警告信号を発する体液を放出させることで、同種の害虫が農園に近づきにくくなる効果も期待できる。
防虫剤の過剰使用は、農業の持続可能性を脅かす深刻な問題である。有機栽培の導入は、この課題を解決するための効果的な手段であり、昆虫や農作物の減少を防ぎつつ、次世代に引き継ぐべき持続可能な農業の形である。
コメント