【2024年度】神田外語大学外国語学部の小論文の改題「翻訳活動」です。
【問題】今後AI技術がさらに発展しても、自動翻訳では対応できない日本語にはどのようなものがあると思いますか。具体例を示して、説明してください。
【改題】今後の翻訳という活動についてにあなたの考えを述べよ。
【ある人の例】翻訳活動についての解答例
翻訳という活動はこれからもますます必要性が高まると考えられる。同時に翻訳を仕事とする人も増加するだろう。なぜなら、今後さらに多くの国同士が繋がるようになると予測するからだ。グローバル化が進み、外国と繋がりがあるニュースの報道が増えてきている。
一つの例として、スポーツが挙げられる。野球では外国の野球チームに所属している日本人選手がいる。外国での試合であれば、当然解説も英語で行われる。それを日本で放送するとなると、英語解説を日本語に翻訳する作業が入る。また、オリンピックやその他大会などのインタビューは、日本人選手だけに行われるわけではない。多くの国の選手にコンディションや感想を聞き、放送する時は翻訳が必要になる。
では、翻訳をするうえで重要なこととは何か。それは、どれだけ相手が理解できるよう伝えることができるかだ。単純に単語ごとに訳を調べて並べることは、大抵の人ができるだろう。しかし、それは本当の意味で翻訳ができているとはいえない。筆者が述べているとおり、まず自分自身がその分野についての知識を持ち、脈絡がある文章を作る能力が必要だと考える。例に挙げたスポーツであれば、基本的なルールや技・ポジションの名称などの知識がなければいけない。
次に、文章構成能力だが、意外にも不足している日本人は少なくない。若い世代になるほど、自分で考えて文章を作る経験が充分ではない。今ではインターネットで検索をすると、その場面に応じたテンプレートの文章が沢山出てくるからだ。知識を身につけるのは大人になってからでも遅くない。しかし、文章構成能力は年齢を重ねるにつれて癖が定着し、直しづらい。そこで、義務教育のうちから、日本語を正しく使用できるようにするための活動をしていくべきだと考える。自国の言語を正しく理解することが、他国の言語理解にも繋がる。
以上のことから、翻訳という活動をしている人、またこれからそういう仕事に就こうと考えている人は、まず日本語を正しく使用できる能力を身につけるべきだと考える。
【添削・アドバイス】翻訳活動についての解答例
1. 論理の流れの明確化
文章全体の構成が論理的ではありますが、各段落のつながりがやや弱い箇所があります。以下のように段落を整理して、論理的な流れを明確にしましょう。
第一段落:翻訳の重要性の増大を指摘(現状と背景)。
第二段落:具体例(スポーツ分野における翻訳の役割)。
第三段落:翻訳に必要なスキル(具体的な知識と能力)。
第四段落:翻訳スキルを育むための教育の重要性。
結論:日本語能力の必要性とその理由を再度強調。
2. 言葉の選び方を洗練させる
いくつかの表現が冗長だったり、わかりにくい部分があります。以下のように簡潔にすると、読み手にとってよりわかりやすくなります。
例:
「翻訳という活動はこれからもますます必要性が高まると考えられる。」
→ 「翻訳の重要性は今後さらに高まると考えられる。」
(「ますます必要性が高まる」が冗長なので修正)
「筆者が述べているとおり、まず自分自身がその分野についての知識を持ち~」
→ 「まず翻訳者自身が分野に関する十分な知識を持ち~」
(「筆者が述べているとおり」は不要)
3. 説得力を高めるための追加情報
スポーツ以外の分野(例えばビジネス、医療、エンターテインメント)でも翻訳が重要な役割を果たしていることを補足すると、多面的な視点を示せます。
例:「また、ビジネスにおいても、契約書や技術書の翻訳が取引成功の鍵となることが多い。」など。
4. 教育の話題を深掘りする
教育について触れている段落は重要なポイントですが、やや唐突に話題が展開している印象を受けます。具体的な例や提案を加え、説得力を高めましょう。
例:「義務教育のうちから~」の部分を具体化して、「例えば作文やディベートなどの授業を増やすことが有効だ」などとする。
5. 最終段落で簡潔にまとめる
最後の段落で主張を再確認する際は、簡潔に述べることで印象を強められます。
例: 「翻訳者には日本語を正しく使用する能力が求められる。それが翻訳の質を高め、異文化間の架け橋となるからだ。」
【全体修正案】翻訳活動についての解答例
翻訳の重要性は今後さらに高まると考えられる。同時に、翻訳を仕事とする人も増えるだろう。これは、グローバル化が進み、多くの国々がより密接に結びつくと予測されるからだ。実際、外国と関わるニュースの報道は年々増加している。
その具体例としてスポーツ分野が挙げられる。たとえば、外国の野球チームに所属する日本人選手が試合に出場する場合、その解説は英語で行われる。それを日本で放送する際には、英語から日本語への翻訳が必要だ。また、オリンピックのような国際大会では、多国籍の選手へのインタビューが行われる。これらを視聴者に伝えるためには、高い翻訳スキルが求められる。
では、翻訳を行ううえで重要な要素とは何だろうか。それは、単に言葉を訳すだけではなく、相手に正確に意味を伝える能力だ。そのためには、翻訳者自身が分野に関する十分な知識を持ち、文脈に即した文章を構成するスキルが必要となる。たとえば、スポーツ翻訳の場合、基本的なルールや技術、ポジション名に関する知識が不可欠だ。
しかし、こうした能力を身につけるには、日本語の基礎的な運用能力が土台となる。近年では、インターネット上のテンプレートに依存し、自分で文章を構成する経験が不足している若い世代が増えている。その結果、日本語の表現力が十分でないケースも多い。翻訳スキルを高めるためには、義務教育段階から正しい日本語の使用法を学ぶ機会を増やすべきだ。例えば、作文やディベートの授業を取り入れることで、自国の言語理解を深めることができる。
翻訳の質を高めるには、まず日本語を正しく使用する能力を身につけることが不可欠だ。それが異文化間の架け橋を担う翻訳者としての第一歩となる。
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