「所与の知」の問題点についての大学入試小論文解答例

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「所与の知」の問題点についての大学入試小論文解答例です。

【問題】「所与の知」というものの持つ問題点について、自分の考えを述べなさい。

「所与の知」の説明画像

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【ある人の解答例】所与の知の問題点について

「所与の知」は人間を一般化する危険性がある点が問題点の一つであると考える。
なぜなら、人間が「所与の知」に頼るほど、人間の思考力は低下し、特徴のない平均的な人間が多くなってしまうからだ。
本文中で「所与の知」とは、自分が変更することは不可能な専門知であり、専門家やその分野に通じた人でないと解釈の間違いに気づけないと述べられている。しかしその定義の中で、現在専門家と言える真の専門知識を身に着ける人の数が減少していると考える。

まず、真の専門知識とは専門に関する本を何冊も読んだり、直接専門家の意見を聞いたりして時間や手間をかけて獲得するものであると考える。なぜなら、ネット上で得た「所与の知」の専門知が本当に正しいものであるかは、著者が述べる通り、真の専門的知識を身に着けていないと判断できず、誤った「所与の知」を吸収している可能性があるからだ。

ネット上でない教科書などの「所与の知」であっても、時が経つにつれ専門的知識の内容はどの分野においても多少変容するため、一冊だけ読んだというような効率的に得た知識は十分に正確ではない。しかし、ネット上やネット以外で簡単に「所与の知」を得る方が遥かに効率的で手間がかからない作業であるため、その方法に頼る人間が増加する。

そのような状況の中で近年「量産型」という言葉が生まれた。「量産型」とは、突出して秀でた知識や趣味を持たず、個性の無い人々のことを指す言葉だ。2010年代後半ごろに生まれた言葉であり、「所与の知」により主体的に行動を起こさずともその場しのぎの知識を得られるようになったことが背景の一つにあると考えられる。主体的に物事に取り組むからこそ個性は生まれるからだ。「量産型」の人間が今後増えるようなことがあっては、人間が人間である意義が薄れ、AIでも代替可能になってしまう。つまり、「所与の知」により思考力や集合知の可能性が限られてしまうだけでなく、人間の根本的な存在意義をも否定されかねないのだ。

このように、「所与の知」には、その便利さ故に人間を統一化してしまうという問題点がある。実際に、チャットGPTのような知力の高いAIが出てきた現在、人間である意義を見失わないためにも、「所与の知」のみに頼らないようにするべきだ。

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【講評・添削一部抜粋】所与の知の問題点について

<講評>
論文のテーマが明確であり、「所与の知」が人間を一般化する危険性について一貫して議論されています。また「量産型」という言葉を用いることで、論点を具体的に説明している点は良かったです。

<より高得点を目指して>
【1】「所与の知」の定義が曖昧です。具体的にどういった知識や情報を指すのかを明確にすると、読者にとって理解しやすくなります。

(例文)
「所与の知」とは、自分自身で発見したり経験したりするのではなく、外部から与えられる知識や情報のことを指す。具体的には、教科書やインターネットの記事、専門家の講義、ニュース報道などを通じて得られる知識を意味する。これらの情報は、すでに他者によって整理され、解釈されたものであり、自らの思考や経験を通じて得た知識とは異なる。

【2】「所与の知」に頼ると人間の思考力が低下するという主張に対する具体的な根拠やデータが不足しています。

(例文)
「所与の知」に頼ることで人間の思考力が低下するという主張には、具体的な根拠としてスタンフォード大学の研究によれば、インターネットから得られる情報に過度に依存することは、批判的思考力の低下につながることが示されている。この研究では、大学生を対象に、インターネットを用いて課題を解決するグループと、図書館で本を調べて課題を解決するグループに分けて比較実験が行われた。結果として、インターネットを用いたグループは短期間で大量の情報を得られたものの、その情報の信頼性や有効性を批判的に評価する能力が低く、与えられた情報をそのまま受け入れる傾向が強いことが判明している。

<添削>
(原文○)チャットGPTのような知力の高いAIが出てきた現在、
(修正案)チャットGPTに代表される生成AIの登場した現在、
→「チャットGPTは、知力の高い」というのは厳密に言えば間違いです。チャットGPTなど生成AIの知力は、人間が用意したパラメータ
によって、変わります。人間が開発を進めて、数多くのパラメータを生成AIに実装することで、賢くなるわけです。つまり、パラメータの数によって、知力が高い生成AI、それに比べて知力が低い生成AIとあるわけです。一概に、「知力が高い」という括りはできないということですね。

またチャットGPTは、プロンプト(動作をするよう促すもの。ここでは、質問・指示)によって、回答が異なるので、使う人間側の能力(質問力・指示力)によって、そのチャットGPTの知力を最大限引き出せるかは変わってきます。今後、「プロンプトエンジニア(※)が注目の職種の一つとなるでしょう。

(※)プロンプトエンジニアとは、テキストなどを生成するAIに対して人間がイメージしているコンテンツを適切に回答できるように命令を出すエンジニアのこと

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